VIEW21 2002.9  国際人を育てる THINK GLOBAL

異文化体験が国際化への鍵

 このように、国際的に活躍できる人材の養成に努めている大学だが、「国際性を身に付けるには海外での実体験が効果的だ」と笠島副学長は語る。
 「もちろん、国内でも異文化体験はできます。しかし、留学すると多くの学生が、語学力以上のものを身に付けて帰ってきます。留学は、単に語学力を高めるためではありません。留学で体験する様々なこと―文化や習慣の違いで戸惑い、英語力のなさに落ち込み、様々な国の人と話して刺激を受けることなどは、価値観や人生観を深める契機になり、留学を選択しなかった学生にもよい刺激を与えます。本学でも多くの学生が留学できるように制度を設け、成績さえ満たせば交換留学申請者の90%は派遣できる枠を準備しています。もちろん、他大学でもチャンスは十分に用意されていると思います」
 黒田教授も、「最近は、海外に行きたがらない学生も増えています。英語がしゃべれなくてメンツを失うのが怖いんですね。もちろん、日本の研究環境が整ってきたので、海外に出て行かなくても十分研究が行えるようになったということもあります。でも、異文化を体験しながら、できないことを一つひとつ解決していくのも、国際化社会で生き抜くための大事なトレーニングなのです」と語る。
 「高校では、『総合的な学習の時間』などを通じて、生徒に様々な体験をさせてほしいと思います。未知の場所にも積極的に飛び出して行け、自分で自分の生き方を決められるような学生は、大学に入学しても、どんどん国際社会に出るチャンスをつかむことができると思います」(吉田教授)
 吉田教授はまた、高校の教師自身も、奨学金などを利用して、積極的に海外に出て経験を積むべきだと強調する。
 「英語科だけではなく、数学科や国語科など、すべての教科の先生方への提案です。生徒にばかり国際化を求めても、指導者が国際化されていなければ説得力に欠けます。本学でも、語学や国際関係学の教授だけでなく、理系の教授もどんどん海外に出ていますし、大学の事務職員のための海外留学制度も整っています。高校でも、国際化はもはや英語科の先生だけの課題ではなく、学校全体の課題となっているのではないでしょうか」

留学生から選ばれる個性溢れる大学に

 「そして、大学自身もさらに国際化していかなければなりません」と黒田教授は強調する。
 「世界の留学生たちを見ると、残念ながらトップ層はアメリカやヨーロッパの大学に行ってしまいます。それは、それだけ魅力的な大学が海外に多いことに他なりません。日本の大学が皆、ミニ東大を目指す時代は終わったのです。これからは、世界の留学生から選ばれる、個性溢れる大学づくりを目指して行かなければなりません。国立大の独立行政法人化などを契機に、世界と伍して戦える大学が増えることを期待すると共に、自らも世界の第一線の研究者として活躍し続けたいと願っています」

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