中間評価による「振り返り」で生徒自らの成長を促す
また、生徒が自己の取り組みを見直し、より高い次元を目指して活動に修正を加えられるよう、同校においては評価のタイミングも綿密にセッティングされている。
「学年末や学期末に行われる従来型の評価のみでは『ここまではできた、できなかった』という最終確認としての評価になりがちです。これでは生徒が自己の足りない部分を自覚し、そこを補うという学習には結び付きにくいですよね。本校では、中間評価を実施することで、生徒が自らの取り組みを見直し、改善する機会を設けています」(石井校長)
同校の総合学習の中心的な取り組みが「地域活性化」であることは既に述べた。生徒たちは、学年末の最終発表会を目標にして研究に打ち込むのだが、同校では、00年度以来、研究活動の経過報告を行うための場として、2学期中盤に学年全体での中間発表会を実施している。同校では評価の機会をここにも設けたのだ。
その効果は絶大だった。中間発表で自己評価を行ったことで、もっと高いレベルを目指したいと、生徒が積極的に自分の取り組みを見直すようになったのだ。
「生徒の研究内容は中間評価後にぐんと深まりますね。到達度の観点別に見ても、各生徒の伸びは非常に大きいんです」(石橋先生)
また、同校では地域研究というテーマを踏まえ、年度末の最終発表会を地域の方々にも開放し、生徒たちの発表を聞いてもらっている。
「地域の人たちに自分の発表を見てもらうことで、生徒たちは『社会に役立つことができたんだ』という自信を持つことができます。この場合、評価という観点での数値化はしていませんが、地域の人たちの反応は第三者評価としての意義を持っていると言えるでしょう」(石井校長)
活動そのものの自己点検にも力を入れる
同校ではまた、活動内容や評価項目などの自己点検・見直しも継続的に行っている。その中心となる組織が、現場の実行責任者と、全体のプランニングを担当する教師の双方が参加する「進取推進委員会」だ。
「この委員会の開催サイクルは1か月に一回。活動を通じて得た反省や改善点を、率直に語り合います。例えば、02年度からは、評価票を生徒に返却する際に面談を取り入れる予定です。生徒と教師で到達度を確認し、『今後伸ばしていかなければならない点はどこか』などの目線合わせをすることで、生徒個々人への適切な指導が行えるようにするためです。こうした改善案も委員会活動から生まれています」(石橋先生)
また、この委員会は「総合学習」の活動を決定する上での最高意志決定機関としての機能も持っている。
「例えば、次年度計画案が学年団から上がってきたときに、NOという判断を下すのもこの委員会です。校長から現場の責任者までが同席するので、納得感のある決定を下すことができるのです」
石井校長は続ける。
「こうした自己点検のための組織を形骸化させないためには、活動の原点をメンバー全員が強く意識していることが大切です。もしそうでなければ、毎年反省点を吸収しているうちに、活動の本質がズレてしまうこともあり得ます。ですから、この委員会では校内で実施した意識調査アンケートの結果をそのまま受けて、活動内容を見直すようなことは決して行いません。学年進行で動くことが多い『総合学習』だけに、育てたい資質や能力など、活動目標に対する認識はしっかり持つ必要があるでしょう」
話の最後を締めくくるに当たって、石井校長は次のような展望を語った。
「『総合学習』で実践している到達度評価に基づく評価手法はまだまだ研究途上であり、課題が多いのも事実です。実際、評価項目も毎年見直していますし、客観性のある評価基準についても今後検討していく必要があります。しかし、一方では、教科学習の評価にも影響を与える可能性を秘めています。例えば、生徒に自分の弱点を自覚させ、自発的にその克服に向かわせるような評価手法の研究は、今後徐々に具体化していくでしょう。その意味で『総合学習』は、到達度評価に基づく新たな教育手法を、高校教育でうまく生かしていく突破口になると考えています」
<前ページへ
|