VIEW21 2002.9  創造する 総合的な学習の時間

相互評価・自己評価・教師評価により
生徒の評価力を育成

 しかし、各評価項目の達成度を数値化しても、その数値に信頼性がなければ、せっかくの評価も意味を持たない。評価項目ごとの達成度はどのような手順を経て数値化されるのだろうか?
 「まず初めに、1・2年生はテーマ学習の発表会、3年生はディベートの実践活動の場を活用して、生徒同士が互いの取り組みを評価する相互評価を行います。次に、相互評価の結果を記した帳票を見ながら、生徒個々人が自己評価に取り組みます。最後に、生徒が書いた自己評価票と、実際の生徒の取り組みを照らし合わせながら、教師が評価を行います。数値化については、相互評価、自己評価でも部分的に行いますが、評価項目ごとの最終的な数値評価は教師が行います」(石橋先生)
 この、相互評価→自己評価→教師による最終評価という評価のステップには、生徒の自己評価力の向上を図るねらいもある(図2)。
 「他者との関係の中で自分を客観的に捉えられない限り、本当の意味での自己評価はできません。初めに相互評価を実施するのは、他者による評価を受け止めた上で、自己の評価を行うこと、また、他者への評価を通じて自分なりの評価基準(ものさし)を持つことで、独り善がりな自己評価を行わないようにするためです。また、相互評価・自己評価・教師による評価の項目はできるだけ揃え、3者が同じ視点で評価を行えるよう工夫しました」(石橋先生)
 生徒の評価力を養う仕掛けを意図的に採り入れたことにより、同校においては相互評価で危惧される、個人に対する誹謗中傷や過度に肯定的な他者評価は見られないという。
 「相互評価に取り組む際には、必ず2~3人(2~3班)の発表を聞いてから自分なりの評価基準をつくって、評価がぶれないようにする指導をしています。また、相互評価に使う用紙は記名式とし、生徒にもそのままの形で手渡します。『責任を持って評価しなければ』という意識が働くことで、生徒たちも真面目に相互評価に取り組めるようですね」(石橋先生)
 石井校長は「相互評価が機能するためには生徒の間に切磋琢磨し合う雰囲気を生むことが大切」と指摘する。評価の手順に工夫を加えることで同校ではうまくその空気をつくり出すことに成功しているようだ。

図2 上五島高校「総合的な学習の時間」評価の概念
表

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