「各回の提出期限が決められているため、生徒たちは大変だったようです。でもヒアリング調査の結果は、概ね好評でした。大学入学後の勉強を先取りした内容となっているため、入学前教育のおかげでスムーズに大学の授業についていけたという感想がほとんどでした。高大連携を考えていく上で、今後はこういった取り組みが重要性を増していくでしょうね」(鈴木教授)
AO入試に抱いていたイメージと 実際の入試とのギャップを埋める
夏目教授は、東北大がAO入試を導入したメリットとして「大学や入試の在り方について考えられたことが大きい」と話す。
「AO入試を通じて、東北大はどんな学生が欲しいのか、そのためにどんな入試制度を実施して、どういう教育を行うのか、という根本的なことを見つめ直すことができたのが、一番の利点でしたね。しかしさらに大きなメリットは、欲しい学生像やAO入試の理念を、大学が高校の先生方や生徒たちに分かる言葉で伝えようという姿勢が生まれてきたことだと思います」
では東北大のAO入試に対する取り組みを、高校現場はどのように捉えているのだろうか。
青森県立三本木高校は、02年度入試で初めて東北大AO入試合格者を2名出した。その前年まで同校では、特に生徒にAO入試に対する積極的な進路指導はしていなかったという。
「数年前から情報収集は行っていたのですが、まだ教員間でのAO入試への理解は不十分でした。そこで昨年AO入試に関する勉強会を開いてみたところ、私たちが抱いている東北大のAO入試のイメージと、実際の入試との間にギャップがあることに気付いたのです」(三本木高校進路指導主事・池田敏先生)
池田先生は当初、東北大のAO入試では面接試験のときに専門知識を問う口頭試問を行っていることから、ある一分野のみの知識に秀でた生徒を欲しがっているのではないかと想像していた。しかし、東北大ではむしろ、総合的な学力を持ち、意欲的に物事に取り組む生徒を求めているということが分かった。そこで東北大が求める人材像に合致しており、かつ東北大を第一志望にしている生徒に話を持ちかけ、AO入試にチャレンジさせることになったのだという。
「東北大のAO入試は、学業成績の良さだけではなく、学問に対する意欲も評価の対象にしている点に共感を持てます。高校現場では、社会の中で自分はどう生きていくか、どんな進路を選び取るかという生き方指導が盛んになっていますが、そういった高校の指導の方向性とも、また『総合的な学習の時間』のねらいとも、AO入試は合致するものだと思います」
大学側は求める人材像を提示し、高校側は大学のメッセージに耳を傾けながら進路指導や学習指導の方向性を探っていく。AO入試は、そんな新しい高大連携の形を描き出そうとしている。
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