VIEW21 2002.10  コミュニケーション新時代
 生徒との時間をより大切にするために

 「SOSEKI」と名付けられたこの学務情報システムが検討され始めたのは1996年。当時運用されていた「Campus Information System(CIS)」を発展させ、新たな情報システムをつくるための委員会「熊本大学長期計画委員会情報化推進専門委員会」が組織されたことに始まる。
 「CIS以前の旧学務情報システムでは、例えば履修登録一つとっても、学生が提出したものを人が入力して、そのデータをホストコンピュータに送り、出力したものを学生に渡し…といった煩雑な手続きが必要でした。我々は忙しいし、学生にとっても面倒な作業ばかり。そこで事務処理の省力化、ペーパーレス化が大きな課題になっていたのです」と語るのは、「SOSEKI」の運営管理に当たる教務課学務情報係長の宮津勇一氏と同学務情報係主任の後藤正三氏。大学の学生サービスの向上が叫ばれ始める中、履修登録や成績処理にかかる手間は、学生一人ひとりに目を向け、彼らの大学に対する要望や相談に応えることへの障壁にもなっていた。
 無論「SOSEKI」は、事務方の発想のみによって誕生したものではない。CISが活用されていた当時から、教官を中心に「受講者を知るためにも、できるだけ早い段階で受講者名簿が欲しい」「シラバスを公開したい」「研究室のパソコンから成績を入力できないか」といった要望があったことも、その開発を推し進める原動力となった。
 元々CISでは、できるだけ紙によるデータ配付を廃し、電子メールによる受講者名簿や成績データの送受信、ホストコンピュータへの転送を行うなどの実績があった。ならば、運用中のCISを学生・教官・事務の三者が使えるシステムとして発展させようではないか――それが情報化推進専門委員会の基本方針となった。委員会の発足から2年。98年に「SOSEKI」の開発がスタート。工学系の若手教官が集まり、新システムの具体的な仕様を提案するワーキンググループも結成され、本格始動へ向けた自発的な動きが活性化していった。

学内コミュニケーションのコアとして活用
さらなる可能性を追求

 99年4月、「SOSEKI」は本格稼動を始めた。それから3年。学生や教官の反応はどのようなものなのだろうか。「当初は馴染めない先生方もいましたが、今はこれがないと困るくらいの感じになっています。学生からも導入当初1年くらいは反応が遅いとか、入力方法が分からないといった苦情や問い合わせが殺到して、スタッフを3人も付けて対応することもありましたが、今ではスムーズに機能しています」(後藤氏)
 学籍・成績参照、掲示板閲覧など、様々な用途に用意された「SOSEKI」のシステム(図1参照)。中でも使用頻度が最も高い履修サブシステムは、事務はもちろん、学生・教官双方にとってのメリットを最大限に引き出している。
 学生はパソコン教室から自分の登録したい科目を入力するだけ。シラバスや教官の研究内容を参照しながら、自分に合った登録科目を選ぶことができる。矛盾するような履修登録をしようとすると、エラー表示で知らせてくれる丁寧さだ。また、教官にとっても、以前は履修登録期間とその後の事務処理期間を経てからしか入手できなかった受講者名簿をリアルタイムに手に入れることができる。そこで、早い段階から受講者の顔写真や、これまでの成績を把握し、授業の準備に入ることが可能になるなど、指導面でのメリットは大きいと言う。
 「きめ細やかな学生サービスができるようになった点は大きな変化です。成績不振者のデータ等を教官や事務担当者が参照すれば、学生の指導にも役立ちますし、健康診断や学生相談においても、より手厚いケアが可能になります。ただの事務処理システムではなく、学生生活全体をケアするためのシステムとして機能していること、そこが『SOSEKI』が新しかったところなのではないでしょうか」(宮津氏)

図1 SOSEKIの概要
図

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