「『SCS』で授業を行うには、相手がいなくてはなりません。ですから単位互換はもちろん授業時間の問題など、他大学との交渉や準備に時間がかかってしまうのです。また本学の場合、『SCS』の基地は本部キャンパスに1か所しかなく、受講する場合でも授業をする場合でも、本部キャンパスの情報基盤センターまで移動して来なければならない。使用頻度が低いのには、そういった理由があったのです」と語るのは、「SOSEKI」の立ち上げやシステム開発にも深くかかわり、現在「SCS」の運用管理を担当する総合情報基盤センターの杉谷賢一助教授。
そんな状況の突破口となったのが、ネットワークの急速な普及と「SOSEKI」の存在だ。この「SCS」と「SOSEKI」をうまくリンクさせれば、「SCS」で得られた学内外の有用な情報をネットワーク経由で「SOSEKI」でも閲覧・利用することが可能になる。つまり、「SOSEKI」をより活用することで、「SCS」の問題点を解消できる可能性が生まれたわけだ。
熊本大では最近、3つのキャンパスに「SCS」の画像が流れる仕組みをつくり、他学部の離れたキャンパスでも授業を見ることができる設備を整えた。
「衛星通信はコストがかかるということもあり、『SCS』基地数の増強や技術開発がこれ以上進むかというと難しい。ですが、その代わりに『SOSEKI』のネットワークやインターネットと連動した新しいシステムができれば、『SCS』の利用価値も広がります。例えば『SCS』で行ったユニークな授業を、『SOSEKI』を介してインターネット経由で高校に模擬授業として配信することも夢ではありません。ですから我々としては、ハード面の増強より、利用方法やソフトの内容を考えることに重点を置いていきたいのです」(杉谷助教授)
デジタルなコミュニケーションと生のコミュニケーション とのバランスこそが重要
独自の情報処理システムからE-Learningまで、積極的に学内の活性化を図る熊本大。中でも学生の個人情報の把握や授業評価アンケートといった取り組みは大学に限らず、様々な教育現場で参考になる。しかし、情報技術はあくまでも「学びの場」を変革するための「道具」でしかないことも事実だ。宮津氏も「例えば卒業論文の題目登録は『SOSEKI』でできますが、その後の卒論完成までの過程は、やはり教官と学生の生のコミュニケーションが重要です。我々も、メディアを通してできる部分と、そうではなく顔を突き合わせて行うべきコミュニケーションのバランスを大切にしていかなければならないと思っています」と語る。
また、全学を対象とした新入生の情報リテラシー教育を担当する杉谷助教授は、次のように強調する。「来年から高校で『情報』の授業が始まると聞いています。どんな授業が行われるのか、それは各高校の先生によるのでしょう。しかしどんな場合でも、まず教えてほしいのは基本的なモラルやマナーです。情報化が進む世の中で、顔が見えないコミュニケーションが増えています。顔が見えなくても、世の中のマナーやモラルは守っていかなくてはなりません。そのことを学生たちには早い段階でしっかりと知っておいてもらいたい。パソコンの扱い方なら、いつでも簡単に覚えられます。ネットワーク社会にも基本的な道徳があり、コミュニケーションにおけるマナーがある。それをわきまえておくことが、これからの情報化社会を生きる生徒たちに、最も重要なことなのではないでしょうか」
全キャンパスに8台設置されている証明書自動発行機。IDカード化されている学生証を使って成績証明書、在学証明書、学割証、成績一覧表、健康診断証明書などを簡単に入手することができる。
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