VIEW21 2002.10  リーダー群像
 現状をどう捉え、どう行動したのか

桝一市村酒造場・小布施堂取締役
セーラ・マリ・カミングス

老舗造り酒屋再生プロジェクト

新しいことを始めたいと思ったら、まずは自分が動くことが大切

 長野県上高井郡小布施町。栗の郷として知られるこの土地は、人口約1万人強のこぢんまりとした町だ。江戸時代には南北に流れる千曲川水運で栄えた商業都市であり、昔ながらの土蔵や屋敷が建ち並ぶ。葛飾北斎が晩年を過ごし、数々の名作を生み出したのもこの町であり、小布施文化と呼ばれる商人文化を形づくってきた。
 その伝統ある町の文化を江戸時代から常にリードしてきたのが、桝一市村酒造場(ますいちいちむらしゅぞうじょう)だ。造り酒屋であり、また「小布施堂」という栗菓子の老舗を営む同社は、1980年代から始まった小布施町の町並み修繕事業(古い蔵や建物を修復し再利用する町起こし運動)において中心的な役割を担ってきた。
 94年春、そんな町に季節外れの「台風」がやってきた。セーラ・マリ・カミングス。現桝一市村酒造場・小布施堂の取締役である。老舗であるがゆえに残っていた古い体質を変え、風前の灯火だった同社を立て直し、また、「国際北斎会議」を地元で開催するなど、会社と町を大きく変えた人物だ。
 「桝一市村酒造場や町にとって必要なことは何があってもやり通す」と言い切る彼女のニックネームは「台風娘」。異文化の中で、違った考えを持つ人々と常に衝突を繰り返しながら、文字通り台風のような勢いで同社を引っ張っている。

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セーラ・マリ・カミングス
1968年、アメリカ・ペンシルベニア州に生まれる。93年、ペンシルベニア州立大学を卒業、長野オリンピック組織委員会のボランティアスタッフとして来日。94年、桝一市村酒造場に入社、96年、利酒師の資格を取得。98年、桝一市村酒造場・小布施堂取締役に就任。01年、自身のコンサルティング会社「SMC」を立ち上げる。



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