【取り組みを終えて】
取り組みを通して同じ課題を教師が共有できた
さて、このような取り組みを通してどのような成果が得られたのだろうか。まず第一に挙げられるのは生徒たちの成長と、参加した各校の教育活動における広がりであろう。
「例えば、今回の『高校生フォーラム』に向けて、本校ではできるだけ参加の裾野を広げるため、生徒全員に企画意図を説明しました。そして、校内選考のための発表会を学園祭で行うことにし、学校全体での取り組みであることを生徒に印象付けたのです」(牧先生)
具体的な手法として、同校では「チーム対抗意識が強い」という伝統をうまく生かすことで、生徒の参加意欲を高めていった。同校では学園祭や体育大会などの学校行事を、学年の枠を取り払ったチーム対抗形式で行ってきた。その枠組みを「高校生フォーラム」に向けて活用したのである。
「1学年6クラスですから、1~3年混成のチームが校内に6つできます。本校では学園祭の展示や企画、合唱コンクールなどをすべてこの枠組みの中で行ってきています。伝統的な取り組みの要素を生かすことで、校内での研究もずいぶん盛り上がりました」(牧先生)
こうしたアプローチが効を奏し、調査研究・発表に直接参加する生徒以外にも、取り組みを拡大することができた。実際「高校生フォーラム」の会場では、プロジェクターやパソコンの操作、あるいは会場設営などを生徒たちが中心になって行っていた。新たな行事を学校に根付かせる上で、この手法は極めて有効に機能したと言えよう。
また、保護者に対しても事前の保護者会などを通して「高校生フォーラム」の意義が繰り返し説明された。今回のフォーラムは多くの保護者にとって、学校改革の理念や目標を、最も具体的に実感できるチャンスと言えた。実際、フォーラム当日の会場にはかなりの保護者が足を運んでいた。また、ある参加校では秋の文化祭で今回の発表を再現する機会が設けられたという。
一方、名越和範教頭が今回の取り組みを通して得られた第二の成果として指摘するのは、人材育成について共有できる部分が多い他の高校と人的なパイプが築けたことだ。
「フォーラムの実施に向けて校内の意思統一が進みました。そして、同じ課題を抱えている他の高校とのパイプができました。『高校生フォーラム』に参加していただいた各校は、地方公立進学校としての新しい時代に向けた人材育成の観点や、生徒の資質変化への対応など、多くの共通の課題を抱えています。こうした課題をお互いに確認し、建設的な話し合いができるような土壌がつくれたことは大きな収穫だったと思います」
例えば「高校生フォーラム」においても、生徒同士の話し合いの他に、教師同士が意見交換を行う「情報交換会」の時間が設定された。そこでは「高校生フォーラム」に向けた各校の取り組み状況のみならず、「総合的な学習の時間」の実施状況や、育成すべき生徒像などについて積極的な意見交換が行われた。また「実は、本校の場合は学校レベルでの取り組みに至らなかった」という声も出るなど、本音での話し合いがなされた。学校間共催イベントを一過性のもので終わらせないためには、このような関係性の構築が重要になるだろう。
さて「第1回」とタイトルにもある通り、同校ではこの取り組みを次年度以降も継続していく予定だ。
「本校の取り組みにお招きしているスタイルですから、参加を無理にお願いすることはできません。しかし、せっかく築いた関係をより発展させるためにも、次年度も同様のフォーラムを開催できればと思っています。次年度に向けて、一層学校間の連絡を密にしていきたいですね」(名越教頭)
当初は学校改革の延長線上にある取り組みとしてスタートした「高校生フォーラム」。だが、倉吉東高校の教師たちは今、その未来に学校間連携がもたらす新たな教育の可能性を見ているようだ。
各校の発表を踏まえた討論の時間も設定された。初めて会った他校の生徒同士が、物おじすることなく議論の応酬をした。
参加校の教師たちが互いの課題を話し合った「情報交換会」の一コマ。進学校として同じ課題を共有できたことは、今回のフォーラムの大きな収穫の一つだ。
<前ページへ
|