【8月6日 開幕】
大きな課題にも高校生らしい斬新な提案で挑戦
期待と不安を持って迎えた当日、会場となった「倉吉未来中心」は集まった大勢の人たちの熱気に包まれていた。会場には参加校の代表や倉吉東高校の生徒に混じり、保護者や一般市民、報道関係者の姿もあった。1日目は開会の挨拶や加藤尚武鳥取環境大学長の基調講演が主なプログラム、2日目が本格的な発表と討論の場だ。
まず先陣を切って発表したのは修猷館高校。題目は「グリカでエコロジカルショッピング」。エコ商品の販売が伸びない原因を、消費者に対する経済的動機付けの欠如に求め、「グリーンカード」というポイントカードの導入を提案した。エコ商品を買うとグリーンカードにポイントが貯まり、そのポイントに応じて所得税の控除が受けられるという提案だ。パソコンのプレゼンテーション用ソフトを駆使した分かりやすい発表、そして何より経済と環境の両立を、高校生なりに考え抜いた提案に会場からは大きな拍手がわいた。
一方、環境悪化の原因を経済発展を求める人間の行動原理そのものに求めたのが松本深志高校。経済的動機付けに基づく環境対策の限界を主張し「成長はもう要らない」と若者らしいラディカルな発表を展開した。
身近な地域や学校でのフィールドワークを重視した取り組みにも目を見張るものがあった。鹿児島県のゴミ処理事情を丹念に追い、独自の環境アセスメントモデルを提案した甲南高校、地元の宍道湖の生態系を詳細に調査した松江北高校、そして、学校の中でもできる身近な取り組みからペットボトルの再資源化を考えた浜松北高校などの発表には、綿密な調査の裏付けが生かされていた。また、紙の再資源化について論じた倉吉東高校の発表においても、古紙の回収拠点としてコンビニエンスストアを提案するなど、随所に柔軟な発想が見受けられた。
そんな中、異彩を放っていたのが安養高校の発表だ。黄砂問題という国境を越えた課題を題材に、解決策として日本・韓国・中国の協力体制の構築を掲げるなどグローバルな提案を行った。また、安養高校の発表はすべて英語で行われたが、緊張の素振りも見せず流暢な英語で堂々と主張を展開する姿に、傍聴席にいた多くの生徒たちが刺激を受けたようだった。そして、発表に続いた討論の時間まで、会場の高まったボルテージが下がることはなかった。
「提案の具体性の欠如や内容の詰めの甘さについては、ゲストにお招きした大学の先生方から指摘を受けた部分もありました。しかし、たとえ出てきた結論は十分なものでなくても、とてつもなく大きな課題を考える経験自体が大切だと思うのです。『高校時代に一度徹底的に物を考えた』という経験は、生徒がこれから生きていく上でもきっとかけがえのない経験になるはずですから」(牧先生)
発表・議論がすべて終了した3日目、環境材料科学等の権威である安井至東京大生産技術研究所教授がフォーラム全体を通した講評を行った。発表手法や技術そのものに対する講評よりも安井教授が強調したのは「これだけ環境のことを真剣に考えている若者がいるなら、日本の将来は明るい」という所感だった。
「第1回 高校生フォーラムin倉吉2002」参加校
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