新課程における シラバス作成に向けて(2)
新課程への移行を目前に、全国の高校現場ではシラバス作成が本格化しつつある。今号では、先号に引き続き、高校現場の2つの事例と、自治体単位でシラバス作成に動き出した大阪府の取り組みをレポートする。
高校現場の事例1 福岡県立修猷館高校の場合
育成すべき生徒像を明確にし 学習習慣の確立を重視したシラバスを作成
全国屈指の進学校である修猷館高校は、1999年度よりシラバスの作成に着手し、00年度より実際に運用を開始している。全国的にも早期に作成された同校のシラバスは、どのように運用されているのだろうか。
新課程への課題意識がシラバス作成の前提
「本校が03年度新課程に向けて意識しているのは、生徒の主体的な学習姿勢をいかにして養うかということです」
同校のシラバス作成の経緯を語るに当たり、教務主任の荒神一臣先生はそう前置きした。
「全国的な傾向と同じく、本校においても家庭学習の習慣がなかなか身に付かない、あるいは、教師からの積極的な働きかけがなければ予習をしてこないなど、生徒の気質変化が目立ってきました。しかし、学習量の低下を授業の中で補おうとしても、指導時間の減少が余儀なくされている現実がある以上限界があります。『3年間の指導計画を踏まえた上で、生徒が自分なりの学習ペースをつかめるようにしなければならない』という思いから、本校のシラバス作成はスタートしました」
同校では従来、教師が作成した1年間の「学習指導計画」を生徒にも配付し、年間の授業計画だけは生徒に伝えてきた。しかし、これでは1年間の予定は把握できても、次年度の科目選択や文理分けを意識した学習を行うことはできない。また、教師用のフォーマットがベースになっていたため授業進度以外の情報を、生徒が読み取ることも難しかった。そこで同校がシラバスを作成する際に重視したのは、3年間を見通した授業計画を生徒に明確に伝えることと、主体的な学習姿勢を養うための学習方法を具体的に示すことだった。
「こうした問題意識にバラツキが出ないようにするため、まずは3学年・3主任の会議で書式を確定しました。当初の意識にあったのは、『情報公開』と『説明責任の時代』の生徒のためのシラバスを作成することでした」(荒神先生)
このような手順を経て作成された同校のシラバスは、どのような特徴を持っているのだろうか。以下で詳細に見てみよう。
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福岡県立修猷館高校教諭
荒神一臣
Kojin Kazuomi
教職歴23年目。同校に赴任して15年目。教務主任。数学担当。「生徒の視線でものを見るようにしています」
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福岡県立修猷館高校教諭
古家啓司
Furuie Keishi
教職歴23年目。同校に赴任して8年目。化学担当。「日々の授業では生徒から学ぶ姿勢を大切にしたい」
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