VIEW21 2002.10  特集 進む「理科離れ」と理科教育の展望

「理科離れ」の背景にある多様な要因

 「理科離れ」の背景には、様々な要因が考えられる。例えば、次ページで前経済同友会教育委員会副委員長の平田氏が指摘しているように、「日本人全体の科学への関心の低さ」や、「研究や発明に対する社会的評価が不十分であること」などもその一因であろう。確かに、OECDによる一般市民の科学的問題への関心、知識に関する国際調査においても、「日本の大人の科学への関心、知識は世界的に非常に低い」という結果が出ている。また、住環境、生活スタイルの変化も、理科や科学を日常生活と結び付きにくくした。都会と田舎の差はあるものの、総じて、昔は家の周囲に山や川などの自然があり、日常の遊びがそのまま「自然観察」になっていたり、モノが壊れたら修理をするなど、理科や科学が生活の場に溶け込んでいた。しかし、今やそのような環境を望むのは難しい。このように、「理科離れ」と言われる現状の背景には、多様な要素が影響を及ぼしていると推測できる。
 しかし、子どもたちにとって、最も影響の大きい要因は、やはり学校現場における理科教育の変遷であろう。80年代以降、教育課程の改訂の度に授業時間は削減され(図3)、自然体験に出掛けたり、実験や観察を行うことが難しくなった。このことが、「理科離れ」を助長させる結果となったのではないか。高校現場においては、限られた時間の中で、生徒に大学入試に対応できる知識を習得させなければならない。その一方で、授業時間数は削減されていくという板挟みの状況である。
 しかし、こうした「理科離れ」の現状を何とか打破する糸口はないのか。今後どうすれば「理科離れ」を克服し、理科好きの子どもを増やしていくことができるのか。そこで、今回は「理科離れ」と言われる問題について、その現状をデータで検証すると共に、産業界・行政・教育界の各界の動きを踏まえ、高校教育の現場では、どのような対策が求められているのか考えてみたい。

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