VIEW21 2002.12  国際人を育てる THINK GLOBAL

――入試にはどのような影響があるのでしょうか。
 06年度入試の大学入試センター試験にリスニングテストを導入したいと考えています。また、TOEICなど、外部試験の結果の入試での活用を促進していきます。
――今回は、英語教師の資質向上にも力を入れられていますが、その特徴は何でしょうか?
 英語力の具体的な数値目標を立て、平成15年度から5か年計画で、中学・高校すべての英語教師約6万人に研修を実施する予定です。これは、都道府県が実施する研修への補助事業という形で行われますが、レベル別の少人数クラスで英語力の向上を図るだけでなく、民間学校の教師や大学教授による「英語教授法」の講義なども実施していく予定です。実施時期は各都道府県に決定してもらいますが、基本的には、夏休みなどの長期休暇を使って行われると思います。さらに、英語指導体制の確立のため、外国人(ネイティブ)の正規教員の採用を、中学・高校については1000人まで伸ばす予定です。
 戦略構想は、英語力の向上に主眼を置いていますが、国際理解教育を促進するため、様々な施策を考えています。10月17日には「国際理解教育に関する研究協議会」を開催し、小・中・高校における国際理解教育に関する取り組みや指導方法等について討議を行いました。今後も、このようなプランを積極的に推進したいと考えています。

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「国際理解教育に関する研究協議会」での目白大多田教授の講義。国際理解教育の具体的手法が紹介された。



「国際理解教育に関する研究協議会」レポート

 ここでは「国際理解教育に関する研究協議会」の中から、目白大の多田孝志教授の講義概要を紹介する。

 この日の講義テーマは「総合的な学習の時間で行う国際理解教育のねらいと実践の在り方」。
 まず、多田教授は国際理解教育において育成すべき生徒像を、「個の確立した生徒(自己の人生を自ら切り開く力を持った生徒)」「多様な他者との創造的な関係性を構築できる力を持った生徒」と定義した。
 「これらの力を育成するためには、生徒をいろいろな人に出会わせ、対話の機会を持たせ、また、自分の意見を確立させることが大切です。そのような人とのかかわり合いを通して、自分の中に、新しい何かを作り出すことができる。私はこれを『自己再組織化』と呼んでいますが、そのような学びの形が国際理解教育の原点だと思います」と多田教授は語る。
 「例えば、環境問題や地域紛争などのグローバル・イッシューをテーマに、生徒たちに話し合いをさせます。対話の数を増やすために5~6人のグループに分け、皆で資料を集めた後、お互いが議論を行いますが、このときに一つのグループを、さらに二つに分け、聞き役と発表役を作ります。前半後半で役目を交替させ、聞き役は、発表役の意見を聞いた後、必ず何か意見を言わなければいけません。さらに、それらの成果を一つのパネルにまとめさせます。このような対話型の授業が国際理解教育には適していると思います」
 さらに、多田教授は生徒たちをそのような学びに導くためには、教師が指導に一工夫加えることが重要だと強調する。
 「例えば、チョコレート片を三つ持たせ、意見を言った生徒はチョコレートを一つ食べるというルールを作ります。おしゃべりな子はすぐにチョコレートがなくなってしまいます。これで、自分の考えを一方的に主張するだけではなく、相手の意見を聞き論理的に発言することが大切だということが理解できるようになります。このようなちょっとした工夫を授業に生かしてほしいですね」
 多田教授は、国際理解教育に限らず、教師の役割は、プランナーであり、情報・学習スキルの提供者であると言う。
 「子どもたちが驚き、考えることが楽しくなるような学習材が日々開発されています。常にアンテナを張り巡らせてそれらを収集し、工夫しながらとにかく実践してみてください。何も国際理解教育だからと言って、国際理解の学習材を使用する必要はありません。国際理解教育は日々の授業の中にこそあるのです」


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