VIEW21 2002.12  指導変革の軌跡 島根県立松江東高校

学年会の充実は、
担任団全員で生徒全員を見守り、指導していくという姿勢へとつながっていく。そこで、1年生の学年会では、定期的に「研究授業」を実施し、各担任の授業をお互いに見学している。この研究授業がユニークなのは、目的が授業方法の研究ではなく、授業を受けている生徒の様子の観察にある点だ。
 「教師は自分の担当外の授業を、生徒がどんな態度で受けているか知りません。そこで担当外の授業を見学することで生徒理解を深めようと考えたのです。特に心掛けているのは、生徒の授業態度の悪い面をチェックするのではなく、良い面を見つけ出そうということ。教師は生徒の問題点にばかり目がゆきがちですが、視点を変えれば意外な一面を発見するきっかけになりますからね」(泉先生)
 今後は授業を見学した感想をプリントにして、生徒たちに配ることも予定している。これが「教師全員で君たちを見守っているよ」という生徒へのメッセージになり、生徒が前向きに学習に取り組む契機になればと考えているのだ。
 また、中間試験後の6月に行われた「クラス分析会」では、各担任が生徒たちの学習成績、出欠状況、部活動への加入状況などのデータから、何らかの支援が必要だと考えられる生徒をピックアップ。それを基に担任団全員で対応策を話し合った。一方、2学期中に行われる2回目のクラス分析会では、逆に「個々の生徒の良い面」に目を向けていく予定だ。そのために担任団が各部活動の顧問のところに出向き、生徒の活動の様子を聞いて回るといったことを計画している。
 生徒の欠点を補うばかりでなく、長所を発見して伸ばしていく指導。しかもその指導に担任だけではなく生徒にかかわっている教師全員で取り組んでいく体制を、1年生の学年会はつくり上げている。

では、こうした
担任団の熱意は、生徒たちには届いているのだろうか。因果関係は定かではないが、今年の1年生は定期試験で警告点を取る人数や、遅刻・欠席の数が激減しているという。才木先生は、「特に遅刻の数が減っていることは評価すべきことではないか。学校生活がつまらないという生徒が増えると、遅刻も増えていくものです。比較的生徒がまじめに登校しているということは、生徒が学校生活に前向きに向かおうとしている現れと捉えていいんじゃないでしょうか」と語る。
 1年学年会では、2学期以降も月別レポートを継続し、必要な取り組みはどんどん提案・実行していくことにしている。
 さらに、次年度以降の体制づくりに役立てるため、今後は各取り組みの総括を行ったり、月別レポートの課題を洗い出したりして、何がどこまでできたのかを検証していく予定だ。

図

<前ページへ

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。

© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.