(1) 校内→地域へ(活動の広がり)
同校では、当初1年生の課題研究のテーマを「学校改善」への提案としていた。まずは自分たちの身近な問題から考えさせるのがよいと考えてのテーマ設定だったが、活動が校内に限定されているため、生徒の達成感が低かった。そこで、従来2年生から実施していた「地域活性化」を1年生からテーマとして扱うように修正した。
(2) 提言→実践へ(活動の深まり)
当初は地域活性化のための提言をまとめ、発表会で地域の人たちに聞いてもらうようにしていた。しかし、「言うだけでなくやってみる」ところまでできて初めて、本当の「効力感」「自信」が得られるのではないかと考え、2年生では「提言」に基づく「実践」まで行えるよう修正した。
同校の取り組みがこのように変化していった背景には、生徒の主体性を高められるようなテーマ設定へのこだわりがある。同校の石井校長によれば、「社会的に価値のあるテーマであり、かつ高校生でも具体的な提案ができるもの」であることが重要だと言う。同校が「地域活性化」というテーマを深めていった理由はその点にある。自分たちの生活する社会である地域の課題について考え、実際に「提言」し、さらには「実践」活動まで行うことにより、地域に役立つことができたという「効力感」を持つことができる。そして、それが、生徒にとって大きな自信となり、主体的な活動が深まるのだと言う。
その他にも、同校では生徒が自ら成長するための「到達度評価」に取り組むなど、生徒の活動の様子を見ながら、より主体的な活動の在り方を模索している。
theme 2 実践活動を校内でどのように 継承・発展させていくか
活動を継承・発展させていくための「組織運営体制の問題」は先進的に取り組んだ学校が共通に意識する課題であり、既に動きだしている学校にとっては最も関心の高いテーマの一つではないか。ここには大きく2つのポイントがあるように思われる。
A:活動を標準化していく
学年進行で進めるケースが多い「総合学習」では、学年間の意識の差を埋めたり、指導内容・指導方法などのノウハウの共有化・標準化を図っていくことが、「学校全体の取り組み」として、活動を継承・発展させていく上で重要なポイントとなる。この点について、先進校ではどのような工夫を試みているのか。岩手県立遠野高校の事例(02年10月号掲載)から、ポイントを振り返ってみたい。
遠野高校が「遠野学」と名付けられた地域研究の「総合学習」に取り組み始めたのは99年。当時はまだ実践校も少なく、同校の教師の間でも「総合学習」そのもののイメージがぼんやりとしている状態だった。そこで、まずは「総合学習」の活動イメージが沸くよう校内研修を実施。他校視察の結果報告などを通じて、「総合学習」への理解を深めていった。
次に、実際の指導に当たって、詳細な生徒用の手引きを作成。手引きはあくまでも、生徒が主体的に学習に取り組めるようにするためのものであるが、同校では、この手引きを教師の指導マニュアルにもなるよう工夫した。年間の学習計画や評価方法などを掲載したこの冊子により、指導のばらつきを最小限に押さえられるようにしたのである。
また、1年生から学年進行でスタートした取り組みを、他学年の教師にも知ってもらうことで、学年間の意識の差を埋め、意思統一を図っていくための仕掛けとして、新聞形式で活動の進捗状況を報告している。
学校全体へ取り組みを浸透させていくためには、こうした意識面、指導体制面の標準化を図っていくことが欠かせない。他にも、多くの高校で同様な工夫がなされていた。
図3 岩手県立遠野高校の活動標準化の仕掛け
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