VIEW21 2002.12  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

評価方法の多様化が授業改善につながった

 では、実際に作成された評価規準や評価方法に沿って授業を実践することで、どのような変化があったのであろうか?
 「絶対評価の一番のメリットは、やはり今まで実力がありながら、枠が決められているために『4』を付けざるを得なかった生徒に『5』を付けられるようになったことです。また、評価規準に沿って授業を行うことで、教師が授業で何をすべきかが、より明確になってきました。教師同士で、一人の生徒に対する情報をまめに交換し合うようにもなりましたね」(笹森満明教頭)
 今野先生は、観点別評価を意識した授業を行うようになってから、授業の在り方が変わったと語る。
 「国語では、講義形式の授業が多かったのですが、観点別評価を毎日の授業に取り入れてからは、スピーチをさせたり、ただノートを取るだけでなく自分の意見を書かせるようにしたり、自己評価、相互評価をさせたりと、様々な方法を用いて生徒を評価するようになりました。評価方法が多様になった分、生徒の得意分野・苦手分野も把握できますから、小テストなどでもただ点数を付けるだけでなく、コメントを書くなどして、きめ細かい指導ができるようになりましたね」

カッティングポイント上にいる生徒の評価が今後の課題

 一方で、机上で考えていたことがなかなかスムーズに実践できないという焦りも出てきた。
 「単元ごとの評価規準があまりにも細かすぎて、教師の負担が増え過ぎてしまったのです。授業には4つの観点に沿って作成されたチェックリストを持っていくのですが、チェックするべき項目が多すぎて授業に集中できなかったり、評価のための評価になってしまうこともありました。今後は、もっとポイントを絞った評価規準を作成する必要があります」(笹森教頭)  また、カッティングポイントをどこで設けるかという問題も生じた。
 「達成度が70%以上の生徒をAとすると、69%だった生徒はBでよいのか、1%の違いはどこにあるのかという問題もあります。教師によって判断が甘くなったり、厳しくなったりとバラツキも出てきました。カッティングポイントにもう少し幅を持たせた上で、教科会議で複数の教師が判断するなど、信頼性を高めていくためのシステムづくりが今後の課題です」と曽宇勝治校長は語る。
 その他、テスト問題の見直し、評価材料の開発など、まだまだ解決するべき課題は多く、信頼性のある評価法を確立するにはあと2、3年は必要とのことだ。
 「これからの学校教育は、個に応じた指導を充実させることが益々求められます。ともすると、観点別評価は『評価のための評価』になってしまいがちです。大切なのは、生徒と教師の信頼関係を築いていくこと。また、評価するだけで終わるのではなく、蓄積した材料を用いて生徒の可能性や課題を把握し、どう指導を改善していけるか考えていきたいですね」(曽宇校長)
※絶対評価に関しては、中学校現場でも試行錯誤を繰り返しながら、最適な評価方法を研究している段階である。また、入試への対応等も課題となっており、今後も注目していく必要があるだろう。


写真 写真
苫小牧市立緑陵中学校校長
曽宇勝治
Sou Katsuji
教職歴36年目。同校に赴任して2年目。「当たり前のことを当たり前にできる生徒、知育・徳育・体育のバランスがよい生徒を育てていきたいですね」
苫小牧市立緑陵中学校教頭
笹森満明
Sasamori Mitsuaki
教職歴25年目。同校に赴任して3年目。「現在は学校変革の時代です。その一つとして、絶対評価をさらに充実させていきたいと考えています」

<前ページへ

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。

© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.