【議論2】COE構想 「大学評価」に陥らない見方が必要
COEは「大学の評価」ではない
高田 次の話題に移らせていただきます。当初のトップ30大学構想と比べCOE構想は、指定を大学単位で行うとしていたところを、「研究ユニット」に変えています。世界的な研究拠点をつくる、という目標については生きているわけですが、高校現場ではこの問題をどのように捉えているのでしょうか。
安宅 「COE」という名称を知らない人もまだ大勢いるようです。以前の「トップ30大学」ならみんなよく知っているのですが。
岩瀬 私の学校では、当然入ると思っていた大学が入っていなかったことに対して関心が高かったですね。国立大で言えば千葉大や岡山大、私立大では明治大や東京理科大が入っていない。その一方で、立命館大が3件も入っている。
天野 多くのマスコミは「意外性がない常識的な結果」という報道をしていますが、私自身は岩瀬先生がおっしゃるように、「意外性があった」と受け止めた方が良いのではないかと思います。例えば、玉川大はそれほど研究型の大学ではないのになぜ入っているのでしょうか。こうした点を考えていけば、きっと報道の在り方、受け止め方も変わってくると思うのです。
安宅 COE全体で見た予算が、初年度180億円、次年度から400億円というのは少なくはないのでしょうか。
天野 国立大が人件費以外でもらっている基本的な予算は3000億円くらいです。また、私学助成金が総額で3000億円です。このことを考えれば十分大きな予算と言えます。また、COEに関して言えば、予算の大きさそのものではなく、指定されることに大学の名誉がかかってくるところに注目が集まりましたね。
評価の一人歩きが問題
安宅 そういう考え方はしないほうがいいと思います。指定を受けた大学はいいでしょうけれど、外れた大学の名声が落ちてしまうというのは。
天野 もちろんそういうリスクもあります。私自身もこの案が出たときは反対しました。本来の「研究拠点の育成」という目的とは別に、「COEの指定を受けた大学は良い大学だ」という評価が勝手にできてしまうことが見え見えですから。
安宅 私も当初は、「どこの大学が採択されるのか」に興味があったのですが、研究ユニットに対する評価だと分かったときに、「あ、これは大学の評価だと思って見ていると危ないな」と思うようになりました。大学ごとの指定数に注目した報道ばかりですが、これを大学単位で見ていくのは間違いだと思います。大学側もこれを自学の宣伝に使うのはCOEの趣旨に照らしてもやめてほしいと思います。でも、私立大はやるんだろうな、とは思いますけど(笑)。
岩瀬 COEの評価はいわゆる「トップ30大学」的な見方に単純に流されては危険なのでしょうが、現実としては旧帝大クラスはともかく、私立大や地方国立大同士の激しい競争を促すことになるでしょう。特に来年度は社会系も発表されますので、今後の受験生の動向にもボディーブローのように効いてくるでしょう。
山上 そうですね。COEの指定の有無や研究費の額は当然一人歩きし、指定された大学とそうでない大学の格差が拡大して、前者の大学への入学は厳しくなっていくでしょう。
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