VIEW21 2003.2  リーダー群像
 現状をどう捉え、どう行動したのか

株式会社東海メディカルプロダクツ社長 筒井宣政

初の国産バルーンカテーテル開発プロジェクト

IABP(大動脈内バルーンポンピング)バルーンカテーテル
急性心筋梗塞や心臓手術後の心機能を回復させるための救急救命用具。胸部大動脈内に挿入し、心臓の拍動に合わせてバルーンを拡張・収縮させ、心臓の働きを助ける。同社が国産化に成功するまではすべて外国製品で、日本人の体型に合わない場合が多かった。


「娘の命を救いたい」その一念が不可能を可能にした

 筒井宣政氏が社長を務める医療機器メーカー・株式会社東海メディカルプロダクツは、初の国産IABPバルーンカテーテルを開発したことで知られる。バルーンカテーテルは心筋梗塞などの応急処置に欠かせない医療器具だ。
 「この仕事には、医学の他、化学や機械、材料、加工などの知識が必要です。それを経済学部出身の私が40歳に近い年齢で始めたわけですから、無茶苦茶な話です。でも、やると決めた以上は絶対に目標を達成するという固い信念がありましたから、それほど苦にはなりませんでしたね」
 筒井氏が愛知県春日井市で同社を設立したのは1981年。それまでは父親の創業した樹脂加工会社・東海高分子化学株式会社の二代目社長として会社を切り盛りしていた。
 「私が引き継いだ頃、東海高分子化学は借金の保証や手形の裏書きなどで莫大な借金を抱えていて、その総額は当時の利益で返済すると70年はかかるというものでした。父親は必死で会社を立て直そうとしましたが、結局過労で寝込んでしまい、長男の私が会社を引き受けざるを得なかったのです」
 大混乱の日々だった。昼間は会社の業務をこなし、夕方には資金調達に出掛ける。そして、金策を終えて帰宅するのが夜中の3時…。このような生活を半年間続けた結果、65kgあった体重は47kgに激減した。
 「大変な毎日でしたが、心も身体も至って元気でしたね。普通の人にはできないような仕事を自分の力でクリアしていく緊張感がありました」

アフリカでの一発逆転満塁ホームラン
借金完済を成し遂げる

 2、3年経って会社が少し落ち着いた頃、筒井氏は知り合いの商社マンからある儲け話を持ち掛けられた。その頃、アフリカの女性が髪を縛るために使っていた木綿糸は、滑りやすく使い勝手が悪かった。それに代わるものを作れば大量に売れると言うのだ。そこで筒井氏は、試行錯誤の末、外れにくいビニール製の紐を作り上げた。当時は、外貨の持ち出しが厳しく制限されており、自らがアフリカへ行って商売をするなど思いもよらないことだったが、多額の負債を抱える会社の状況を打開するには一発逆転満塁ホームランしかないと思っていた筒井氏は、アフリカ行きを決意した。


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