VIEW21 2003.2  指導変革の軌跡 広島国泰寺高校

また教師にとっても、どの単元をどのレベルまで教えればよいのかを明確にすることで、指導方法の改善にもつなげている。教科研究部長の柞磨昭孝先生は次のように語る。
 「約8割の生徒が到達目標をクリアする授業ができれば、その授業はほぼ成功だと考えています。しかし、むしろ大切なのは、到達目標に達しなかった残り2割の生徒への手だてです。適切な課題を与えながら、最終的にはほとんどの生徒が到達目標をクリアできるような状態に持っていければ、シラバス作成が本当の意味で生きたものになります」
 こうした一連の授業改善の取り組みの成果は、家庭学習時間や模試の結果となって既に現れており、いずれも上昇傾向にある。また「あの学校なら、持っている力を伸ばしてくれる」といった評価が生徒や保護者にも伝わり、より学力上位層の生徒が入学するようになってきているという。

現在、
広島国泰寺高校は、さらなる一歩を踏み出そうとしている。これまで個々に実施されてきた様々な取り組みを一つのビジョンの下に体系化し、各取り組みの成果を適切に評価・改善していくシステムを整えつつあるのだ。昨年度、同校に赴任した安森讓校長は「フェニックスプロジェクト」と銘打った学校としての基本ビジョンと、ビジョン実現のための年度ごとの到達目標を10年先まで明示した。そして、それをベースに校内のすべての教育活動を体系化し、数値目標を設定する方策を打ち出したのである。
 「数値目標の設定は教科指導や進路指導に関する取り組みばかりでなく、生活指導や広報活動などあらゆる分野に渡ります。具体的な目標を設定することで、何にどれだけの力を入れて取り組めばよいのかが見えやすくなりますし、検証もきちんと行えるようになるわけです」(安森校長)
 数値目標は、「年に何回実施するか」といった取り組み量の目標(アウトプット指標)と、「その取り組みの有効度や満足度」という変容量(成果)での目標(アウトカム指標)を設定している(図2参照)。取り組みに対する分析・評価は、年度末だけでなく、各取り組み実施直後や学期末にも行い、効果が思わしくなかった取り組みについては、自己評価による計画の見直しを何度も行う。また、取り組みの成果を外部にも公表し、学校評議員や地域住民による評価も、次年度の事業計画改善に生かしている。
 加えて「今後は費用対効果等の検証も視野に入れていきたいですね」と才木先生が語るように、同校の改革への意欲は衰えることがない。
 高度な教育システムを構築しつつも、個々の取り組みは、生徒への眼差しを忘れない。この姿勢がある限り、同校の改革は着実に成果を上げていくだろう。

図

<前ページへ

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。

© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.