【3】 学力の向上にどのようにつなげるのか?
CASE 1 小論文・ディベート学習を生かす
甲南高校では、「総合学習」の小論文・ディベート学習が学びのモチベーションを高め、結果として学力の向上に貢献している部分もあると出原先生は語る。
「物事を筋道立てて考える、考えたことを論理的に伝える、という能力はすべての教科に関連します。『総合学習』の実施以後、数的論証や文章読解・表現に対する取り組みの向上が見られるようです」
事実、模擬試験などの結果を見ても、同校の成績は01年度の「総合学習」実施以来、徐々に伸びつつある。
「『総合学習』によって論理的思考能力や自己表現能力が螺旋状に高められ、教科学習と相互に作用し合うことを願っています。本校では継続的・組織的指導体制の下、生徒の生きる力の育成を理想として取り組んでいます」(藤崎先生)
CASE 2 学びの手法を身に付けさせる
出水高校では「総合学習」を通した「学ぶ手法」の習得が、生徒の学力伸長に好影響を与えているようだ。
「本校の『総合学習』では『課題の設定→調査→まとめ・発表』という、学びの基本的な手法を養えるように指導案を考えています。このような学習方法が定着した生徒は、明らかに教科学習への取り組み方や、進学に対する意識の持ち方が変わってきています 」(玉利先生)
CASE 3 教科学習の意味を知る場と位置付ける
川辺高校では、生徒に「学ぶ意味を理解させる」ことで、学力の伸長を図っている。
「例えば『環境』というテーマを切り口にする場合でも、環境家計簿を使って数学を扱ったり、環境汚染の原因を理科的な知識を使って考えさせたりしています。教科学習の意味を知ることで、生徒の学習意欲は大きく向上します」(上ノ原先生)
また、「総合学習」の実施をきっかけに、同校では教科の授業改善に向けた議論が深まりつつあるという。
「教科の枠を越えて、『総合学習』の指導計画を話し合うことで、各教科がどのような年間指導計画を作成しているのかという問題がクローズアップされました。例えば、『総合学習』で環境問題に関するスピーチをさせたいならば、国語はそれまでにスピーチなどの音声言語指導をしておかねばなりませんし、地歴でも環境問題の概略を扱っていなければなりません。この議論はシラバスの作成、学校全体の指導計画の体系化にもつながってくるでしょう。『総合学習』の指導経験は教科の指導にも還元できるものだと思います」(井川先生)
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