【2】 取り組みの円滑な実施を可能にする組織を どのようにつくるのか?
CASE 1 組織の機動力を高めチームワークを強化
甲南高校は、実施当初にある課題にぶつかった。それは、全体計画を立案する「総学研究委員会」メンバー全員が、数ある各種企画の詳細までを毎回検討するのは効率が悪いということである。
そこで同校では、「総学研究委員会」の代表者と各学年の代表者4~5人程度からなる「係会」を、小論文、ディベートなどの企画ごとに設置した。そして、この係会で作成した原案を実施学年で活用しやすいように修正・検討してもらうことにした。係会は少人数のため開催しやすく、意見を気軽に出し合えるため、新企画に対するアイディアが生まれやすい状況ができた。
「本校では企画担当者を中心に係会のメンバーで支え合うというシステムが確立することにより、係会の連帯感が強まり、組織の機動力を高めることができました」(藤崎先生)
さらに、この取り組みにより思わぬ効果も生まれたようだ。
「係会から提出された実施計画を担当教師や学年でさらに改善して実施するという手法が積極的チームワークを生み出しました。例えば、当初教師の不安感の強かったディベートでは、作成した指導案や指導用資料などを教師同士が交換し合いました。また、実施後に生徒の予想以上の変容ぶりを楽しく語り合う場面が多く見られました」(出原先生)
CASE 2 教科中心型から学年中心型に組織変更
課題研究を中心とした「総合学習」を実施している出水高校では、当初は教科中心型の組織編成で活動を行っていた。
「課題研究という活動の性質に鑑み、本校では企画・立案部署である『想造係』のメンバーを教科中心で編成していました。しかし、『総合学習』はやはり学年団が中心になって進める活動ですから、次第に実際の活動や連絡事項の伝達に支障を来すようになってきました。そこで、従来の教科中心の編成を改め、『想造係』には教務主任の代わりに、各学年主任に入っていただきました。そして、教科は学年のサポートに徹することにしたのです」(田口先生)
こうした組織編成を行いつつ、同校では、「想造係」から各学年団に対して、権限の委譲が進められている。例えば、当初は「想造係」で設定していた各時間の指導案なども、現在は学年団内部で決め、全体会でそれを承認するスタイルにしている。
「活動の立ち上げ時には、企画・立案部署が中心になって学校を引っ張っていくことも必要ですが、そのままでは学校全体の活動になりません。最終的には各学年が責任を持って実施していく体制になるのがベストだと思います」(玉利先生)
CASE 3 学年進行を生かしながら学校全体の意識を高める
テーマ学習を軸に「総合学習」を展開している川辺高校の場合は、当初から学年団中心に活動を進めてきた。だが、同校の上ノ原満先生は、従来から実施してきた学校設定科目の経験があるとは言え、組織運営にはかなりの工夫を要したと語る。
「本校では、『総合学習』の実施と並行して、従来の学校設定科目も継続実施しています。そのため、特に『総合学習』実施1年目は、教師の負担感が大きくなりました。そこで、『総合学習』は1学年から段階的に実施していくことにし、1年目は比較的手の空いている2、3学年の副担任がサポートに回るようにしました」
この手法を用いた背景には別の理由もあったと井川先生は言う。
「学年団中心の活動スタイルを取った場合、ともすると学年間に意識差が生じやすくなってしまいます。しかし、1学年からの段階実施とし、他学年の教師もそれにかかわりながら活動を進めていくスタイルを取ることによって、『総合学習』がどんなものかを、他学年の教師も徐々に理解しながら活動を進めることができました」
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