VIEW21 2003.2  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

自分のことが分からない学生が急激に増えている

 学生は同センターにおいて、個別に就職相談を受けることができる。ここに相談に来る学生は年々増加しており、97年度に延べ2940件だった相談件数は、01年度になると延べ3534件と約20%増加している。相談件数が増加すること自体は問題ではないが、相談内容の内訳をつぶさに見ていくと、見逃すことのできない問題点が浮かび上がってくる。相談内容は「職業の研究・選択の方法」や「採用試験について」など、いくつかのパターンごとに集計されているが、その中で、実数・増加率共に最も多かったのが「自己分析」という項目である。これは97年度に535件だったものが01年度には1233件と、実に130%増という際立った増加率を示している。
 「自己分析」とは、自分はなぜ今ここにいて、これからどこへ向かっていくのかという、自分の過去と現在の総括、未来への志向を見極めることである。つまりこの数字は、自分で自分のことが分からない学生が多くいることを表している。
 「自己分析に関する相談が多いのは問題だと思います。だからこそ、自分の将来のビジョンや適性を見極めることが大切になるのです」(日下氏)
 しかし、分からないことがあれば相談に来る学生は、まだ良い方である。中には、どうしたらよいか分からず、同センターに来ることをためらう学生もいるという。そこで、こうした学生の意識を同センターに向けるために、同センターの方から学生に対して積極的に働き掛ける活動も始めている。学内広報誌『Career Letter』の発行、就職活動の具体的な流れを説明するミニセミナーの開催などがそれである。特にミニセミナーは、学生の方からやってきて相談を受けるといった、これまでの就職相談から一歩進んで、学生のいるフロアに同センターの方から出ていって就職に関するガイダンスを行う。これだけでも、消極的な学生の参加意識を高めることができるだろう。

高大接続を視野に入れたキャリア支援に取り組む

 さらに同センターでは、高大接続を意識したキャリア支援の活動も始めている。例えば、受験生に対しても、大学入学後のキャリア形成に対する意識を高めることができるように、昨年9月から「模擬キャリアガイダンス」と呼ばれる行事を実施している。これは、オープンキャンパス時に行われる受験生向けのキャリア支援の説明会で、就職に関する質問について答えるのである。以前は、受験生が聞きに来るのを待つだけであったためか、相談者は1日に6人程度だったという。しかし、昨年9月に初めてガイダンスとして実施したときには、ビラを配るなど積極的にPRをした結果、4回の実施で延べ100人を超えた。
 こうした活動には、受験生にも大学のキャリア支援について関心を持ってもらいたいという大学側の思いが込められている。
 「将来のキャリアまで視野に入れて進学先を考えることで、自分に合った大学・学部選びができるのだと思います。私どもも、キャリアセンターとして総合的なキャリア支援を目指す以上は、今後も積極的に高校生に働き掛ける機会をつくっていきたいと思います。そして、入学後に再び将来について考えるようになれば、キャリアセンターに相談に来てくださいという流れをつくりたいですね」(日下氏)
 大学では今後一層、総合的なキャリア支援に力を入れていくと思われる。高校でも、こうした大学の取り組みと連携することによって、高大接続を踏まえた、より効果的な進路指導を可能にすることができるのではないだろうか。


写真
早稲田大キャリアセンター課長
日下幸夫
Kusaka Yukio

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