VIEW21 2003.2  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

就職支援を越えた総合的なキャリア支援への試み
~早稲田大

単なる就職支援から総合的なキャリア支援ができる組織へ

 早稲田大では、従来の単なる就職支援を越えた総合的なキャリア支援を積極的に推進するというコンセプトの下、年度途中の02年10月1日、従来の学生部就職課をキャリアセンターに改組した。同センターは、学生自らがキャリア形成の主体となって意志決定できるよう、1、2年生も含めた低学年からのサポートに取り組む予定だという。活動が本格化するのは4月からであり、現在は準備期間ということになるが、早めの改組により同センターの活動を積極的にアピールしていこうという意気込みがうかがえる。
 「これからどのような環境の変化に出合っても、その中で自分の将来を見極めながら生き抜いていくだけの力を持った人間に育てることが、キャリア支援の根本にあるねらいです」
 同センター課長・日下幸夫氏は、キャリア支援の目的をこのように位置付ける。
 総合的なキャリア支援の推進は、学生サイドの就職に対する意識変化に対応したものでもある。ここ数年、学生の間で「就職をしたい」あるいは「就職をしなければいけない」といった就職意識が希薄になってきている。学生生活課が実施している「卒業後の希望進路」の調査を見ても、バブル経済崩壊前の89年度には約54%であった就職希望率が、99年度には約45%にまで落ち込んでいる。つまり、就職するよりは何か別の生きる道を考えてもよいのではないか、あるいは、もうしばらく勉学を続けたいという学生が増え始めているのである。
 このような傾向が顕著になっていく中で、従来のように就職のみを前提としたキャリア支援を継続することは、およそ半数以上の学生を無視することになる。
 「そこで、低学年から自分の人生、職業を踏まえて将来を考えさせるように大学側から働き掛けることにしました。そうしないと就職率といった数字の問題だけではなく、学生の質の問題にまで影響が出てくると思ったからです」(日下氏)
 同センターにおけるキャリア支援は、「キャリア教育」「経験」「キャリア形成」の3本柱からなっている(図1参照)。それをベースとした5つのステップを段階的に経ることで、学生自らがキャリア形成に取り組む力を付ける。しかし、このステップは流れ作業のように機械的に進むものではない。学生によっては、どこから始めても構わないし、前のステップに戻ってやり直すことも可能だ。あくまで、学生の資質・能力に対する信頼を前提として、フレキシブルに対応できるプログラムになっているのである。

図

<前ページへ  次ページへ>

このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。

© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.