VIEW21 2003.2  点から線の教育へ 中・高・大接続の深化形

学生の興味を喚起するためのカリキュラム改革を断行

 こうした状況を受けて、93年、東京大では前期課程の大幅なカリキュラム改革を行った。まず、学生の興味を喚起し、勉学に向かう姿勢を持たせるために、必修科目をできるだけ減らして選択科目を増やすという措置を講じた。
 さらに、従来の人文科学・社会科学・自然科学などのカテゴリーをなくし、新たに「基礎科目」「総合科目」「主題科目」を導入。中でも「総合科目」は、後期課程の教授も加わり、様々な分野の最新トピックスを分かりやすく解説するもので、学生の好奇心を引き出し、物事に対する幅広い視点を養うために設けられている。
 一方、「進学振り分け」については、従来は単純平均点を用いて1回限りで行っていたが、一部の学部・学科を除き、これを2段階に改正。各段階において進学の要件となる平均点の出し方を変えた。第1段階では、定員の7割を従来通り成績の単純平均点を用いて内定。第2段階では、各学部・学科が重視する科目に、より高い点数を付与して平均点を算出するようにした。これにより、適性に関連した分野が得意である学生の平均点が上がるなど、従来よりも合目的的に学生の成績を評価できるようになった。
 こうした諸制度の改革の他、各学部でも学生の関心を高める工夫をしている。前期課程の学生を対象とした研究室公開はその一つだ。工学部や文学部をはじめ多くの学部が実施しており、研究内容を担当の教員から直接聞くことができる。
 「シラバスなどを調べて、学部や学科の研究内容を知るだけでなく、実際に研究室を訪れて教員と話をしたり、実験道具に触ったりすることは、学生の興味を引き出すのに非常に効果があると思います」(里見教授)
 同センターでも、独自の取り組みを行っている。進路選択のためのシンポジウムもその一つだ。02年4月には10学部の教員が一堂に会して、「私が学問に目覚めたとき」というテーマで講演会を行った。里見教授はこの催しを、入学してから自分の適性をしっかりと考えて進路を決めるための主要な企画として位置付けている。
 「学生が興味を持つきっかけになるテーマを探すのが大切」と、里見教授が強調するように、いかに学生の好奇心を刺激し、自らの適性に気付かせることができるか。この問題意識が、東京大前期課程の改革の根底に流れている(※)。

※東京大では、06年度の新入生から、学部・学科ごとに30%から5%程度の枠で、入学時の文系・理系の枠を越えて進学先を変更できる「全科類進学枠」という制度を設けることが、取材後に報道されている。


写真
東京大教養学部教授
進学情報センター担当教官

里見大作
Satomi Daisaku

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