VIEW21 2003.2 特集 「学習力」の構築

 「懇談会での議題は、参加校への事前アンケートを基に決定されます。今回、低学年時の指導を議題の一つに盛り込んだのも、参加校の先生からのリクエストがあったからです。最終的に、生徒を希望の進路に進ませることが目標ではありますが、そのためには、低学年からの指導が必要だという意識が先生方の間で広まってきていますね」(吉田文敏先生)

共通アセスメントで新入生の意識・学習習慣などを把握

 今年度、参加11校は1年生の学力、学習習慣、学習や進路に対する意識について、共通のアセスメントを実施した。懇談会では、そのアセスメント結果を基に情報交換が行われた。これまで「学力」のみだった指標に「意識」「学習習慣」といった指標を加えることで、より多面的に生徒を把握し、指導の視点を増やすことがねらいだ。また、「新課程」1年生を迎えるに当たり、生徒の変化を予測し、対策を前年度中に固めておきたいという意図もある。
 アセスメントの結果からは、英語・数学・国語の成績が、従来の生徒よりも低下していること、全国平均と比べ、岩手県の高1生は、「学習時間は少なくない」ものの、「学習法が分からない」という悩みを抱えている生徒が多いこと、また、予習の仕方については、古典で「辞書を引かない」という生徒が非常に多いことなどの特徴が浮き彫りになった。
 「新入生の学力の低下だけでなく、学習意欲や学習習慣などの変化を客観的データで共有できたことは、参加したすべての教師の危機感を高めたと思います」と吉田先生が言うように、懇談会では、辞書を引く習慣が定着していないという話題から、「もっと中学校の教科書や指導の現状を把握するべき」との意見が出た。また、勉強時間は少なくないが、「学習法が分からない」生徒が多いことに対しては、早い時期に予習や復習の方法を指導するなど、生徒のやる気を潰さず、うまく学習法が確立できるよう、従来の指導法を見直すべきとの課題意識が共有された。
 「今回のアセスメント結果からは、生徒一人ひとりに対して、さらにきめ細かい指導が求められていることが読み取れました。そのためには、教師が今まで以上に結束を強め、組織的な指導体制を整備することが重要です。今回の検証結果や、話し合いの内容を学校に持ち帰って、反省会などの場でフィードバックし、新年度の指導計画に反映していきたいと思います」(永野校長)

進路指導主事の実地研修の場としてさらにネットワークを広げる

 吉田先生は、「大学進学懇談会」開催のメリットを次のように語る。
 「週5日制や新課程、『総合的な学習の時間』の導入など、現在の教育現場は転換期に立たされています。今までの指導を改めて考え直さなければならない時期に来ているのですが、やはり自分の学校だけで考えるのでは、『これでいいのだろうか』と不安になることも多いです。このような会議で、他校の様子を聞いたり、意見を交わすことで、今後進むべき道を再確認できたり、違った視点からアイディアを得たりすることができるのはよいですね。
 また、会議で他校の先生方と交流を深めることで、何か聞きたいことがあるときは連絡を取りやすくなりますし、よい意味での競争意識も生まれています」
 今後は、さらに懇談会の参加校を増やし、ネットワークを広げていく予定だと言う。
 「新課程が始まれば、今度はその検証も行っていく必要がありますし、課題は山積みです。高校を取り巻く外部環境も、生徒の気質も年々変化している今の状況を考えると、各校内で課題を抱え込むのではなく、学校間での連携を深め、知恵を出し合っていくことが、ますます大きな意味を持つようになってくるのではないでしょうか」(永野校長)


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