VIEW21 2003.2 特集 「学習力」の構築

Part 4 Report

――岩手11校会議――
「平成14年度 第2回大学進学懇談会」の取り組み

共通アセスメントに基づく情報交換で
高校間の連携を深め、生徒の学習力を把握する

 今回の特集では、生徒の「学習力」をいかに高め、自律的な学びに向かわせるかを考察してきたが、課題解決に向けて動き出している現場の事例についても紹介しておきたい。
 岩手県下の進学校11校が集まり意見を交わす「大学進学懇談会」。例年、生徒の大学進学のための学力向上を目的としてきた本会議の内容が、今年度は大きく変わった。「目に見える学力」だけでなく、生徒の意欲や学習習慣などについての共通アセスメントを実施し、学習指導に役立てようという試みが始まったのだ。


県全体で学力向上を考える

 別名「11校会議」とも称される「大学進学懇談会」は1980年代半ばに発足した。今から10年以上も前のことだ。当初は7校会議として始まったという本会議の設立趣旨について、黒沢尻北高校の永野雅美校長は次のように語る。
 「岩手県は、一関、水沢、北上、盛岡、花巻など、独特の地域ナショナリズムを持った土地が集まって成り立っています。そのため、地域の各高校は旧制中学の時代から地域の人々の信頼と期待を一身に受け、その期待に応えるべく競い合ってきました。しかし、当時は岩手県の共通一次の成績はあまり芳しくない状態。大学進学が一般的になり、全国に視野を広げた指導が必要になるにつれ、『県内で成績や順位を競い合うだけでは、大学受験には対応できない。高校間の連携を密にし、県全体で生徒の学力向上を考えていくべき』という雰囲気が次第に高まってきていました。そこで、当時の黒沢尻北高校の高橋忠孝校長が音頭を取り、県内の高校で連携して大学入試に対応するための任意の研究会として『大学進学懇談会』を発足させたのです」
 設立当時の「大学進学懇談会」の議題は、(1)大学入試の現状分析、(2)それに応じた各校の指導体制についての情報交換、(3)学力向上にかかわる問題点の抽出とその対策、が大きな柱だった。つまり、「大学への進学実績をいかに高めるか」がテーマだったと言う。しかし、「近年は、生徒の気質変化や教育環境の変化に従って、議題も変わってきましたね」と永野校長が語るように、今年度の懇談会では、現1年生の成績概況や、中学校で新課程を経験した新1年生への初期指導が大きなテーマの一つとなっている(表1)。

図

写真 写真
岩手県立黒沢尻北高校校長
永野雅美
Nagano Masami
教職歴36年目。同校に赴任して1年目。「生徒には、知的な楽しさを見いだしてほしいですね」
岩手県立黒沢尻北高校教諭
吉田文敏
Yoshida Fumitoshi
教職歴32年目。同校に赴任して6年目。数学科担当。「生徒をよく観察しながら、指導法を考えていきたいですね」

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