高校生が感じる‘DREAM’ 表現する‘DREAM’
「あいつは登っていったよ
負けると分かっていながら
だけど
あいつは勝ったんだ
負けると思っていたのは
ぼくの方なんだ」
これは、今回の「チャレンジ文化祭」(進研ゼミ高校講座のイベント「Challenge★Challenge2002」)の詩・ポエム部門に届いた、青森県在住の高校2年生の作品である。後悔から新しいことが見えてくる。そんな前向きな気持ちを表現したかったという。
「Challenge★Challenge」とは、進研ゼミの会員である高校1年生から高校3年生までを対象に、ある1つのテーマを設けて、部門別に高校生からオリジナルの作品を募集し、審査する企画である。2002年度のテーマは「DREAM」。小説・エッセイ、詩・ポエム、イラスト・絵画、マンガ、写真、音楽、ノンジャンルの7部門を設けて、各部門別に優秀作品が選出された。
全国の高校生から届いた応募作品から見られる「DREAM」とは、一部には白昼夢や幻、カフカの『変身』のような世界観を示すものなど奇抜なものもあったが、大半は将来の目標を持つという意味の「夢」だった。高校生はその「夢」に対して、どう考えているのか…。
「自分が自分の道を探し歩いている姿を表現してみました」(東京都・3年生)、「進路を決めなきゃいけないのに、どうしていいのか分からず焦っている自分です」(岩手県・3年生)など、将来への夢をつかみ切れず漠然としている今の自分を表現しているものが多い。また、今の自分の状況に不満足であり、またそれを打破できない自分にジレンマを感じている生徒もいる。夢を持っている友達、自立している大人への「羨望」が垣間見られるのだ。マンガや小説などストーリーのある作品には“何もできない主人公”と“夢・将来が明確な他人”が出演するパターンが多い。また、絵画や写真といったビジュアルに訴える作品にも“自分の進路について思い悩む”姿や、“夢のない自分の心の葛藤”を描いた作品が数多く見られた。自分と周りを比較して、「私にも夢が欲しい!」という願望を作品に込めているのだ。しかし、それを得るためにはどうしたらよいのか分からないと模索し悩んでいる姿が浮かび上がってくる。今の高校生には、自分の将来像を描くことが困難で刹那的に過ごしている生徒が多いと言われているが、高校生が今回のイベントに寄せてきた作品からも確かにそれは感じられる。しかし、そのような生徒でも、作品から伝わってくる雰囲気は明るく自由奔放さを感じさせる場合が少なくない。自分の内面では、現状を何とかしたい、将来に向けてしっかりとした目標を見いだしたいと願い悩みつつも、他方では明るく行動しようとしている、そんな高校生の姿が見えてくるようだ。
イラスト・絵画部門最優秀賞受賞作品「旅立ち」。画面中央の象は、生徒自らの姿を投影したもの。密林の中で自分の道を探して歩き回る姿に、現在の自分をオーバーラップさせている。
ノンジャンル部門最優秀賞受賞作品。これを書いた生徒は「『無限の可能性』という言葉に将来の夢に向かっての意気込みを込めた」と語る。「夢」の文字をピンク色で書いた発想が評価された。
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