高校生は自分を「表現」する機会を求めている
高校生審査の後に待っている一流の専門家(プロ)による最終審査での審査基準は明確だった。高校生の作品だからと言って、アマチュアの作品という色眼鏡で見るのではなく、あくまで、プロと同じ土俵に立つことができるかどうか、その一点だった。そのため、作品そのものの出来映えだけでなく、その作品に込められた思いや情熱、未完成ゆえの力強さを評価された受賞作品もある。「鉛筆描きのマンガは審査には論外ですが、内容がとても面白く、キャラクターが生きています。作者のしっかりとした世界観があると思います」(マンガ部門最優秀作品に対するコメント)、「いろんな描き方がごちゃ混ぜで、種類に分類できないところが面白い」(イラスト・絵画部門優秀作品に対するコメント)など、現時点での評価ではなく将来の可能性を見据えた審査結果であることが特徴的だった。プロからコメントをもらった高校生の中には、シビアな意見に落ち込む生徒もいたようだ。しかし、自分の可能性を見極め、進路を模索していく上で、学業ならば教師の評価の役割が大きいのと同様に、その道の一流のプロの目から将来性を評価されることは、非常に貴重なことであるに違いない。
応募者は、評価の結果に新たなチャレンジの課題を見いだすことができる。そして、「もっとレベルの高いものを目指して挑戦してみよう」という意欲につながっていく。
今回のイベントを通して分かったことは、高校生たちは「何か」を表現するという行為に飢えていて、自分の気持ちを大勢の人に伝えたいと願っているということだ。
高校生は、大きなパワーを秘めている。それを適切に引き出し発揮できる場や機会さえあれば、周りの人間だけではなく自分自身が驚くほどのエネルギーを発揮することができるのだ。
実際に応募してくれた高校生からは、「初めての応募でしたが、オリジナルの作品をつくることの難しさと楽しさを実感できました」(三重県・2年生)などの自分の新たな可能性を見いだしたコメントや、「高校生活最後の年、迷いの多いこの時期に自分の才能に対する自問自答ができました」(山口県・3年生)、「僕はこれでデザイナーになることを決意しました」(愛知県・2年生)など、進路へとつながるような声も寄せられている。
学業であれ趣味であれ一つのことを成し遂げたら、それは自信につながる。今日の高校生が求めているのは、「自信づくり」の機会ではないだろうか。
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