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次の
「物事を本質から考え、それをきちんと表現できる」
とは、問題への対処法や身の処し方ではなく、問題の本質を見極め、解決を図るということです。つまり「今大切なのはうちの製品の長所をユーザーにきちんと伝えることだ」とか、「苦しいけれど、この市場から絶対に撤退してはいけない」といった目標や方針を持つということですね。しかも、その目標や方針を相手にきちんと伝える表現力が重要です。外国人に対しては当然英語で表現することになるわけですが、訥々とした喋り方でも構いません。何を伝えたいか、論理的で意思を伴っていることが大切なのです。
三つ目の
「自分の考え・発想を概念化、普遍化できる」
というのは、まさに「価値創造の力」そのものを指します。しかも、世界共通で受け入れられる普遍性を持った価値を創出できるかどうかがカギとなります。例えばファーストフード店は、今ではどんな小さな町にもありますが、あれを最初に事業化し、コンセプト化した人は新しい価値を創造したと言えます。
ただし、企業は価値創造ができるキーパーソンとしての人材を必要としていますが、大量採用するほど多くは必要ないでしょう。企業が一般的に必要とするのは、自分の守備範囲の問題を主体的に解決していく自立的な人材です。つまり、言われてから動くのではなく、当事者意識を持ち、創造的に解決策を見いだす力が求められるということです。
【3】 未来を担う人材育成のために
多様な価値観に触れ変化の時代を生き抜く自立心を育んでほしい
学校は、国を支える最重要の人材育成機関です。自分自身の未来、ひいては日本の未来を切り拓く若者を育てていけるのは、学校以外にありません。そういう意味で、大学に期待したいのは、キャンパスをもっと社会に、そして世界に開かれた場にしてほしいということです。
日本の大学は、高校を卒業してすぐ大学生になった若者ばかりで占められていて、留学生や企業人が極端に少ないのが実情です。人種も違えば、学ぶ目的も「学問を究めたい人」から「自国へ帰ってビジネスで成功を目論んでいる人」まで種々雑多。そういう一様でない価値観を内包した空間で学ぶことによって、環境への適応力や、ビジネスチャンスを嗅ぎ取り、ものにしていく力が身に付きます。「世界から留学生、研究者など知的関心の旺盛な人が大勢集まる大学かどうか」は、今後、大学を評価する際の、重要なポイントになるでしょう。
高校については、生徒に職業研究をさせて、職業についての知識を増やすことは意義あることです。とはいえ、高校段階で生徒が将来就きたい職業を決定できるかと言うと、難しい側面もあります。
そこで、生徒にはむしろ、様々な人の生き方に触れる機会をつくることが大切なのではないかと思います。進路講演会などで、OB・OGの方に語ってもらう場を設けている学校も多いですが、そうした機会は、単に職業について知る以上に、人生の先輩の生き方、考え方に触れ、「自分もこのように生きる、生きたい」という自立の芽を育んでいくという意義が大きいはずです。
ビジネスの世界は、今後さらに競争が激化し、すさまじいスピードで変化を遂げていくことが予想されますが、そんな中で、たじろぐことなく立ち向かっていく力、すなわち自立に向けた力を育てるのが、高校時代だと思います。
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