ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
生徒の実態を継続的に調査し、指導改革案を立案・検証する
   8/8 前へ


データを活用して
指導改革を行う――。この手法は同校の指導改革を進める大きな力になっている。同校では進路指導課が中心となって独自のリサーチを積極的に実施し、具体的な改革案を時期に応じて提言しているのだ。例えば、従来は夏休みの補習を前期・後期の2期設定し、どちらも選択制としてきたが、今年度からは、後期については必修化する予定である。その決断を裏付けたのも客観的なデータだ。
 「この改革案を提言するに当たり、『補習受講の有無』と『その後の成績の伸び』の相関を調べ、資料として提出したのです。その結果、教科によっては、前・後期両方受講した方が成績の伸びが大きいことが分かりました。長期休暇中に補習を開講するのはなかなか難しいですが、客観的なデータを示すことで、教師の間に補習の成果に対する確信を生むことができました」(水野先生)
 そして注目すべきは、補習を開始する際に、データを示しつつ生徒にその理由をきちんと説明したことだ。
 「データがあれば、あまり意欲的でない生徒に対しても、今補習を受けるべき理由を客観的に説明することができます。また、『実際に補習を受けるとどのくらい伸びるのか』という学習の見取り図も示すことができます。教師が生徒一人ひとりを対象に指導を行う際にも、データを生かしています」(徳増先生)
 また、同校が01年度に改革に向けた議論を始める際にも、進路指導課が作成した生徒の成績データが活用されている。
 「ここ3年間の生徒の成績推移を、偏差値帯ごとにグラフ化しました。その結果、入学時の成績はこの3年間でほとんど変わらないのに、年を追うごとに3年次での成績が下がっていることが明らかになりました。改革のスタートにこうしたデータを提供したことは、以後の議論を進める上で大きな効果があったと思います」(水野先生)
 進路指導課がデータを提供し、学年団に対して具体的な改革案を提言するというスタイルは、ともすると「押し付け」と取られる危険性を秘めている。しかし、同校においては「進路指導課は3年間を見通した大きな指導ストーリーを構築し、学年団は生徒の実情に応じた手法でそれを具体化する」(水野先生)という分業が確立しているのだと言う。進路指導課と学年団の密接な協力関係もまた、同校の改革を支える大きな力の一つなのだ。
一連の改革は
現在も続いている。同校は03年度から、全教科においてシラバスに基づいた授業を展開し始める他、02年度の実績を基に、同様の指導改革の手法を今年度の1年生にも引き継ごうとしている。今後の展望について、水野先生は次のように語る。
 「公立の中高一貫校の出現や、私立高校の中等部設置など、本校を取り巻く環境が依然として厳しいことには変わりありません。しかし、中高一貫制を導入する学校は、必然的に高校段階での募集定員を減らさざるを得ません。だからこそ、私たちはこの状況に、逆にチャンスを見いだしたいと考えています。と言うのも、本校が指導改革に成功し、着実に成果を上げたなら、中学校卒業段階で進学校を目指す生徒にとって、本校は今まで以上に魅力ある学校になるはずですから」
まだある参考にしたい取り組み
 
このページの先頭へもどる
   8/8 前へ
 
このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.