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ネイティブの教師を軸に、新しい英語教育に取り組む
このように、元々あった取り組みを継続・深化させる一方、同校では、イマージョン・プログラム、ネイティブ・スピーカーによるソロ授業など、新しい取り組みも行っている。
イマージョン・プログラムとは、教科の授業を英語によって行う英語力育成のメソッドの一つである。教科と語学能力をより効率よく向上させることができるという報告もなされており、世界でも注目されつつある語学学習法だ。高田教頭は、このプログラムを実施することになった経緯を以下のように語る。
「京都のある私立高校を視察したとき、英語で数学や社会の授業を行っているのを見て驚きました。生徒側にも高い英語力が求められるので、すぐに数学や社会の授業を始めるのは難しいかも知れませんが、美術や音楽、体育などの実技系の教科ならば、本校でもできるのではないかと考えたのです」
02年度に試みられたのは、ALTによるLL教室での「情報」の授業。英語を媒体としてコンピュータの知識を身に付ける授業は、生徒には好評だったという。
「03年度は、美術、音楽、体育などの実技系科目に加え、授業内容に応じて数学や家庭の一部での導入を予定しています。ALTと教科担当、英語担当とのチームティーチングの形を取るため、本校では英語の教師だけでなく、他教科の教師にも年3回は姉妹校等で海外研修する機会を与えています」(高田教頭)
イマージョン・プログラムに加え、同校の目玉と言える取り組みがネイティブ・スピーカーによるソロ授業だ。常駐のALT2名に加えて、県内の英語学校のネイティブ・スピーカー9名に一定期間、授業を依頼している。
「02年度、1・2学期は、オーラルコミュニケーションの授業以外は主に日本人の教師が担当していました。しかし3学期は、それまでに身に付けたリーディングや文法、リスニングの力を実際にどれだけ使えるかを試す期間として、英語の授業をすべてネイティブ・スピーカーによるソロ授業にしました。授業の内容も評価も、基本的にはネイティブ・スピーカーの教師に任せています。授業内容もテスト内容も日本人の教師とは全く違う視点で作成されますから、より広い観点から生徒を育成、評価できるのではないかと考えています」(三阪先生)
全校生徒の英語力を把握し、授業改善に生かす
同校の様々な取り組みが各々独立したものにならず、一本の線で結ばれているのは、SELHiになった当初に行われた生徒の英語力に対する現状分析によるところが大きい。
「独自の取り組みを考えるには、まず、本校の生徒がどのくらいの実力を持っているのかを把握することが必要だと考えました。そこで、リスニング、リーディング、ライティングの各技能を絶対評価で測定できる外部テストを用いて、現状把握を行うことから始めたのです」(高田教頭)
その結果、普通科の生徒については、特にライティングの力が不足しており、国際交流科の生徒については、パラグラフ・リーディング、パラグラフ・ライティングの力が不足していることが明確になった。そこで、普通科では『まとまった内容を簡単な英語で瞬時に表現できる力を身に付ける』、国際交流科では『容易な洋書を瞬時に読むことができる、電子メールで海外姉妹校の生徒と一定の時間内に交信できる力を身に付ける』という具体的な目標をそれぞれ立てることになった。
「このテスト結果の分析により、教師一人ひとりが、それぞれの取り組みや授業で、どの部分に重点を置くべきかが明確になりました。目標がはっきりしてくると、どんな取り組みをしても教師間でのぶれがなくなってきます。今後は、本校独自のスピーキングテストを加え、継続的に実施しながら、研究の成果を測る指標にしていきたいと考えています」(三阪先生)
「3年後も継続できる」を目標に、着実に成果を積み重ねていく
SELHiのプログラムが開始されてからまだ約半年。本格的にすべての取り組みを実施するのは03年度からであり、その結果は今後の取り組みによる部分も大きい。しかし、半年間の授業を経て、「今まで下を向いていた生徒が、英語しか使えない状況で、ネイティブ・スピーカーの教師に自分の意見を一生懸命伝えようとするうちに、授業に積極的に臨むようになってきた」と三阪先生は言う。
その言葉を継いで高田教頭も「英語を話すことに抵抗を感じなくなれば、今度はより内容のある会話をしたいと思うようになり、そこで文法や読解の力も必要だと生徒は気付きます。実践的なコミュニケーション能力の育成に力を入れても、進学にマイナスの影響を与えることはないと思います」と言い切った。
「本校が行っていることは、普通科でも十分に取り入れられるものです。最初からレベルの高い取り組みにしようと思わず、例えばイマージョン・プログラムなら、実技系の教科から始めるなど、生徒の英語力に応じて工夫しながら実践していけば、不可能ではありません。03年度からは、このプログラムに合わせて姉妹校への半年留学派遣を計画しています。また、ネイティブ・スピーカーのソロ授業など、現在のところSELHiでなければできない活動もありますが、先行事例が成功を収め、将来的に制度が変更されれば、一般の公立高校でも取り入れられるようになるかも知れません。本校も公立高校の一つとして、3年後以降もこの取り組みを続けていけるように、研究を重ね、成果を出していきたいと考えています」(三阪先生)
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