ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
学校活性化に自己点検・評価を生かす
石川和昭
東京都立西高校校長
石川和昭
Ishikawa Kazuaki
教職歴39年目。同校に赴任して5年目。「『教育は感化』。生徒と共に過ごす時間を大切にしています」

水谷禎憲
東京都立西高校教頭
水谷禎憲
Mizutani Yoshinori
教職歴25年目。同校に赴任して2年目。「生徒が本当に必要としている指導ができるよう、心掛けています」
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高校現場の実践事例(1)
東京都立西高校
学校のビジョンの明確化を経て
確立したR-PDCAサイクル
 学校の自己点検・評価に向けた、学校単位の取り組みがスタートする一方、教育委員会主導の下、自治体単位で取り組みを始めようとする動きも見られている。03年度からスタートした東京都の取り組みを追った。
SIとR-PDCA サイクルの確立を同時に目指す
 都内でもトップクラスの公立進学校として知られる西高校は、01年度に「学校経営計画」の前身である「スクールプラン」の作成を都教委から依頼されたことをきっかけに、学校の自己点検・評価に取り組み始めた。当時、学校評価は全国的にもあまり前例のない取り組みであったが、同校は、あえてその依頼を前向きに受け止めた。その背景には、石川和昭校長のリーダーシップの下、99年度から続けられてきたSIの確立に向けた議論があった。
 「学区制の廃止や私立高校との競争激化を受けて、本校では公立進学校としてのアイデンティティを確立すべく、議論を続けていました。都教委からの打診を受けたのは、ちょうどそんな時でしたが、私はこの打診をあえてチャンスと捉えることにしました。学校経営計画の作成を通じて、今まで漠然としていた学校のビジョンが明確になれば、自己反省を踏まえたより体系的な教育活動が可能になると考えたからです」(石川校長)
 つまり同校は、SI確立のための議論と「学校経営計画」の策定をセットにして進めることで、学校におけるR-PDCAサイクルを一気に構築することを狙ったのである。では、実際にどのような流れで同校は「学校経営計画」を策定し、運用しているのだろうか。以下で具体的に見ていきたい。


校長のリーダーシップの下に進められた「学校経営計画」の策定
 「学校経営計画」全体の作成方法として、同校ではまず、石川校長自らが叩き台をつくり、それに教職員の意見を吸収していく方式が採用された。「経営責任者である校長が、まずビジョンを示すことが必要」という石川校長の思いがあったからだ。
 都教委からは、「目指す学校像」「中期的目標と方策」「今年度の取り組み目標と方策(数値評価を導入)」という三つの階層で学校の経営方針を表現するようガイドラインが示されていたため、まずは、最も上位の階層に位置する「目指す学校像」の確定が必要だった。無論、この項目がSIを最も反映する部分である。
 「私としては、社会の中核を担う人材の育成を目指す以上、『大学進学を目指す進学校』という面を今以上にアピールすべきだと考えていました。しかし、学校の予備校化を危惧する声が教師の間に根強かったのも事実です。そこで、『目指す学校像』では、進学支援の充実と共に、文武両道の学校であることも盛り込み、『全人教育と進学を共に実現する学校』というビジョンが伝わるよう工夫しました」(石川校長)
 表現を工夫したこと、そして何より石川校長が繰り返し自らのビジョンを教師に語ったことで、「目指す学校像」は次第に校内に浸透していった。「ビジョンを明文化することの効果は思いの外大きかった」と語るのは水谷禎憲教頭である。
 「本校は戦前から続く伝統校ですから、『目指す学校像』は本来明確なはずなんです。しかし、それを明文化する努力をしてこなかったために、『進学校』『進学支援』といった単語だけが一人歩きし、ビジョンがまとまらなかったのではないかと思います。しかし、全人教育と進学指導の充実を同時に図るというビジョンが校長から明確に示されたため、議論の前提がしっかり固まりました。このことがSIの確立に大きな効果を発揮したのです」
 
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