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学校活性化に自己点検・評価を生かす
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他の自治体の動向
―三重県の例―
 学校の自己点検・評価の導入に際して、教育委員会がイニシアチブを取るケースは、地方自治体が行財政改革の一環として教育改革に着手するようになるに連れ、全国に広がりつつある。東京都とほぼ同時期に取り組みをスタートさせた三重県の事例を追った。
ボトムアップを重視した経営計画の策定
 学校現場へのR-PDCAサイクルの導入を目指して三重県教育委員会(以下、県教委)が動き出したのは00年度のこと。地域社会に対するアカウンタビリティの確保と、学校改善の支援を目的としたのは東京都と同様である。ただし、東京都が初年度から学校の教育活動全体への評価を求めたのに対し、三重県では個々の教育活動に対する自己点検・評価からスタートした。
 「最終的には学校全体の経営評価を目指していますが、まずは個々の教育活動のレベルで自己点検・評価を行い、R-PDCAサイクルの概念や運用ノウハウをつかんでいただきたかったのです。学校経営に対する評価は、まずそこが基本になると考えました。言わば、ボトムアップ型で取り組みを定着させることを狙ったわけです」(落合英次主幹)
 このような意図に照らし、県教委ではR-PDCAの概念の普及や、先進事例の情報提供にも力を入れている。
 「自己点検・評価の実施に際しては、参考情報として他校の状況やノウハウが求められますが、県教委としても現場からセミナー開催などの具体的な要請があれば積極的に対応しています」(辻喜嗣研修主事)
 取り組みを開始してから3年。成果は徐々に表れつつある。
 「初年度は、自己点検・評価の対象を『光熱費の節約』や『遅刻者の減少』など、直接数値化しやすいものに設定する学校も見られました。しかし、最近では、『進路指導の改善』や『授業の質の向上』など、学校経営や教育活動の改善を図る目標に進化してきています」(山田正廣主査)


学校間の温度差も自主的に埋めていけるように
 県教委の取り組みは現場でどのように受け止められているのだろうか。ある進学校の校長はその意義を積極的に評価する。
 「本校では進学校としての自校の役割を見据え、シラバス作成を通じた授業評価に取り組んでいます。地域社会へのアカウンタビリティの確保、そして生徒に対する進路保障を行う意味でも、評価の精緻化には今後一層努力していきたいと考えています」
 一方で、弊社が県下の高校にヒアリングを行ったところ、「数値評価の導入を巡って校内の意見集約が難航している」「評価のための評価に陥る懸念がある」という声も聞かれている。自己点検・評価に対する受け止め方は、学校によって温度差があるのが現状だ。
 「学校によって自己点検・評価の捉え方に温度差があるのは事実です。しかし、自己点検・評価は学校が独自の問題意識に基づいて実施してこそ実効性を持つものです。03年度からは学校改革を実現するための経営方針に学校評価を明確に位置付けますが、極力現場の自主性を重んじて進めていく方針には変わりありません」(渡辺久孝教育改革チームマネージャー)

 このように、「学校の自己点検・評価の確立」という同じ目標を掲げた取り組みでも、地域によってその理念や実施方法には違いがある。地域特性を踏まえた学校評価を確立すべく、各地で試行錯誤が続いている。
 
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