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生徒・保護者のアンケートも自己点検・評価に活用
以上のような流れで完成した同校の「学校経営計画」は、どのように指導に生かされているのだろうか。
「数値目標を設定した部分については、各分掌の責任で、達成状況を報告します。その成果は次年度の目標設定に生かされる他、過年度の目標達成状況として、『学校経営計画』に掲載されます。『学校経営計画』は学校要覧や学校のHPにも掲載するので、地域の方々に学校の状況を知ってもらうための指標として十分機能していると思います」(石川校長)
さらに、同校では年に一回、生徒・保護者全員を対象にした学校満足度アンケート調査を実施し、その結果も指導改善に活用している(
資料6
)。しかも、同アンケートの結果は、「学校経営計画」と一緒に学校要覧に掲載される。「地域に学校の状況を知ってもらう」という意味において、これほど効果的なことはないだろう。もちろん、授業の質などについて厳しい意見が寄せられることも少なくないが、同校では、否定的な意見が寄せられたからといって、アンケートの公開を手控えるような議論は出ていない。ネガティブなデータもしっかり公開していくことが、学校の信頼感の向上に寄与すると、多くの教師が考えているからだ。
R-PDCA サイクルの確立が学校の空気を変えた
「学校経営計画」によるR-PDCAサイクルの確立を目指してから2年。同校はその成果をどう受け止めているのだろうか。石川校長は「あくまでも実感レベルだが」と前置きしつつ、まず、教師一人ひとりの意識が変わってきたことを指摘する。
「取り組みがワンサイクル回ってから、校内の空気が変わってきたと思います。実際、小・中学校訪問や出前授業の実施は、00年度に初めて実施したにもかかわらず、今では『小・中学校訪問を年200回、出前授業を年10回行う』という数値目標が立つほど取り組みが発展しました。教育活動を明確な目標に従って実施していく空気が徐々に広がりつつあるようです」
一方、水谷教頭が指摘するのは、学校の教育活動全体に、有機的なつながりが生まれつつあることだ。
「以前は、ある先生に中学校訪問をお願いする場合、あくまで単発のイベントとしてお願いするようなケースがほとんどでした。しかし、『学校経営計画』の策定で、個々の活動と中・長期的な教育目標のつながりが明確になりましたから、同じ中学校訪問を行うにしても、学校全体のビジョンとの関連を示しながらその意義を説明できるようになりました」
もちろん、実践を通じて見えてきた課題もある。特に、学校の最も大きな教育目標である「目指す学校像」が、最終的に実現できているのかどうかを評価する手法の確立は、今後の大きな課題だという。
「現在、教育活動の達成状況を測るための指標として、年次目標に対する評価を行っています。しかし、教育の成果を本当に評価するためには、生徒の人格形成や人間的成長といった、目に見えない指標も含めて評価しなければなりません。その意味で、本当に評価しなければならないのは、『目指すべき学校像』という一番大きな目標の達成状況なのです。現在は、それをうまく評価する指標がないからこそ、下位目標を設けて評価しているわけです。次年度に向けて、何とかこの課題をクリアしたいですね」(石川校長)
当初はSIの確立からスタートした同校の取り組みは、その先に新たなステージを見据えている。
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