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まとめ
学校活性化につながる
自己点検・評価の確立に向けて
ここまで東京都の事例を中心に学校の自己点検・評価の在り方について見てきたが、今後、同様の動きは全国的に拡大していくものと思われる。学校活性化につながる自己点検・評価をどのように構築すればよいのか、ポイントを整理してみたい。
学校としてのビジョンを再度見直す
学校の自己点検・評価の実施に向けて、まず求められるのは、現在設定されているSIや長期ビジョンの再確認である。これが定まらないことには何を目指して自己点検・評価を行うのか明確にならず、せっかくの取り組みも「評価のための評価」に陥ってしまうだろう。全教職員が納得できるよう徹底した議論を行いたい。
その際に問題となるのが、校長のリーダーシップの在り方である。今回紹介した事例校では、校長がトップダウン型のリーダーシップを発揮していたが、小松先生の指摘にもあるように、学校現場における合意形成の在り方には、学校特性に応じて多様な形が想定できる。その意味で、この時点で校長に求められるのは、刻々と変わり行く学校の現状を冷静に把握・分析し、全教職員が納得のできる形で、課題と解決の方向性を提示することではないだろうか。生徒の声、地域の声に耳を傾け、学校特性に応じた合意形成を行いたい。
SIに各分掌のベクトルを合わせる
SIや長期ビジョンの実現に向けた校内体制の整備も、自己点検・評価の実施に向けた重要な課題である。特に、従来の分掌体制をどのように生かしていくのかが、ポイントになるのではないだろうか。
そこで、まず着手したいのが、分掌ごとの年次目標を「SIの実現に向けて有効なものとなっているかどうか」という視点で見直すことである。多くの学校では、既に分掌レベルでの自己点検・評価を実施しているが、必ずしも十分な分掌間調整が行われているわけではない。だが、SIに沿って各分掌の目標設定が体系化できれば、従来のノウハウを生かしながら、学校経営全体に対する評価サイクルが自ずと確立するのではないだろうか。実際、今回取り上げた事例校でも、従来の分掌体制を生かしつつ学校評価を実施している。
外部の声を学校改善サイクルに組み込む
一連の自己点検・評価の成果を、外部に分かりやすく開示していくことも重要である。高島高校のように、保護者や地域の人々にも分かりやすい表現方法を確立することに加え、外部の声を学校改革に反映するルートを確保することもまた、重要な課題となるだろう。今回の事例校では、アンケートを実施するだけでなく、そこで明らかになった課題を学校としてどのように認識し、どのように改善したのかも開示している。こうした施策は、指導改善の視点のみならず、社会的アカウンタビリティの確保においても重要となろう。
以上、簡単にではあるが、今回の取材を通じて見えてきたポイントをまとめてみた。各校の今後の取り組みの参考になれば幸いである。
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