ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
その時教師はそして生徒はどう変わったか
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「授業公開週間」が
「外部の目」を生かした取り組みだとすれば、同校には「内部の目」を生かした授業改善の取り組みもある。英語科が率先して実行している「授業研究」だ。これは、ある教師の授業を一コマまるごとビデオで撮影し、教師が互いにそれを見ながら問題点を指摘し合うというもの。前任校の指導事例をヒントに、率先してこの取り組みをスタートさせた若林校長は、ビデオを使う意義を次のように説明する。
 「画像を止めたり、同じ箇所を何回も見直すことができるので、板書の位置、教壇での立ち位置など細かな点までチェックすることができます。教師が互いの授業課題を指摘し合う機会はなかなかありませんから、この『授業研究』は非常に貴重だと思います」
 だが、実際に同僚の授業に指摘を加えるのはなかなか難しい。若林校長もその点は「ビデオに映っている授業はあくまでも『授業研究』のモデル」として割り切ることを、先生方には求めているという。
 「本当にこの取り組みを授業改善に生かすためには、悪いところを率直に話し合うことが不可欠です。しかし、それが単なる個人攻撃になっては意味がありません。あくまでも『あるモデル』の課題を指摘するというスタンスを取ることを先生方にお願いしています」
 実際、この取り組みを通じて、同校の英語の授業スタイルは大きく変わった。従来はテキスト読解を中心とした講義型の授業が主流だったが、今では音読やスキット、グループワークを複合的に取り入れた形式が主流となりつつある。実は、そのモデルとなったのは若林校長自身の英語の授業だった。
 「1年前、ある先生が研修でしばらく学校を空けたときに、代役として3週間、その先生の授業すべてを担当させていただきました。私自身、従来の講義型の授業に疑問を感じていたので、テキストと関連性の高い資料を見せたり、グループワークを取り入れたりしながら、オールイングリッシュの授業を行ったのです」(若林校長)
 この授業がきっかけとなり、英語科では授業スタイルの在り方そのものが見直された。そして、現在では全授業のオールイングリッシュ化を推進するまでに、指導法の改革・改善が進んでいる。こうした指導法に転換したことによって、生徒の学力面にも少しずつではあるが変化の兆しが見えてきているという。
 「今までテキストを読むのに必死で、教師の方を見向きもしなかったような生徒が、教師と英語でコミュニケーションを取ろうと努力し始めるようになりました。模試の成績などを見ても、発音、リスニングなどの分野でかなりの成績上昇が見られます」(吉田先生)
 今のところ、ここまで徹底した取り組みは英語科だけだが、今後は他教科でも年一回の授業研究を実施していく方針だ。
一連の
取り組みを通じた教師の意識改善は、学校全体の教育活動の見直しにもプラスの波及効果を生みつつある。野村聡先生は、その効果について次のように述べる。
 「例えば、前倒しで実施していた『総合学習』においては、生徒にとって最も身近な職業人である保護者からの職業講演会や、日本を代表する企業・研究所82社を生徒だけで訪問し聞き取り調査する体験学習などの、社会に開かれた学校づくりにつながる新企画へ結実しています。また、課題研究やディベート学習の指導を担当教科の枠を越えて、学年全体、学校全体で取り組み、指導力向上に成果を上げています」
 指導プランを考える場である「職員進路研修会」の在り方も大きく見直された。
 「元々『職員進路研修会』は、入試動向や模試分析を行うものでしたが、02年度からは、教員の指導力向上を図る場としています。例えば、02年度には大学教員を講師に迎えて、『自ら学ぶ力と目的意識を育む工学設計教育』という講義を受けました。さらに03年度は、『生徒に自ら学ぶ意欲を持たせるには』と題した講義の実施を予定しています」(吉田先生)
 また教師の間で、指導方法の見直しに関する積極的な意見が提出されるようにもなった。例えば「学力検討会」では、教科の枠を越えて課題の量や、補習の時数を調整し、学校全体で効率的な指導を行う体制を整備していこうという気運が高まっている。
 小柴先生は同校の今後のビジョンについて、次のように語ってくれた。
 「これまで様々な取り組みを行ってきましたが、それは取りも直さず、教師一人ひとりの意識を変えていくことだったのだと思います。結果が出るのはまだこれからですが、その手応えは本校の教師が何らかの形でつかんでいると思います」
写真 授業公開週間は、年2回実施。受験や授業のことなど、直接、教師に話を聞く熱心な保護者も多い。期間中には、講演会、保護者懇談会が催されることもある。
 
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