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法科大学院の設立によって法学教育はどう変わるのか
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大学のノウハウに応じて特色を打ち出し優秀な学生を呼び込む
 法科大学院が設置されることで、今後、当然予想されるのは大学院間での競争の激化だ。司法試験合格者を増やすためには、まず優秀な学生の確保が重要になる。そこで、各大学院とも特色を打ち出し、学生の呼び込みを図っている。
 新司法試験に合格できるだけの学力を身に付けさせることはあくまで前提であって、他校との差別化を図るには、他にはない特色を出していかなくてはならない。制度・設備面では、土日開講や夏期・冬期休暇開講、サテライト教室の設置などの他、キャンパス内に法律事務所を設置し弁護士の指導の下で実務実習を受けられるように配慮している大学院もある。
 とは言え、やはり問われるのは教育内容での差別化だ。例えば、ジェンダーや人権問題、医療・福祉問題、アジア、オセアニアの外国法など、各大学院とも自校の実績やノウハウに応じた法律分野への特化を図っている。
 「今後、法曹人口が増えてくれば、法曹も厳しい競争にさらされることになります。そういう時代を生き抜いていく法律家になるためには、広範な法律知識を身に付けた上で、特定分野に特化した専門性を持つことにより付加価値を付けていく必要があります。例えば大阪大では、それぞれのキャリアプランニングに合わせて、様々な分野で専門性を持てるようにモデルカリキュラムを用意していますが、中でも力点を置いているのがビジネスロイヤーの育成です。『商都』大阪という地域特性を生かして、産学連携のノウハウも豊富に蓄積していますし、何よりも今後、知的財産権に関する紛争処理や起業家の支援など、ビジネスに精通した法律家の活躍の場は広がると見込まれるからです」(吉本教授)
 さらに、学生にとっては学費も大学院選択の大きな基準になると思われる。法科大学院の年間授業料の標準額は国立大で78万円となる見込みである。また、文部科学省が6月に実施した調査では、私立大の授業料予定の平均は157万円であった。各大学院にはできるだけ学費を低く抑えると共に、学費に見合う教学内容を保証することが求められている。


学生のキャリアプランに応じた教育メニューを策定していく
 このように日本の法学教育が新たな局面を迎える中で、既存の教育課程はどのように変わるのだろうか。
 これまでの法学部では「司法試験」という目標はあったが、必ずしもそれに特化した教育は行ってこなかった。実際、卒業者は公務員や研究者、民間企業など幅広い職に就いている。しかし法科大学院の設置によって、法学部は教育の方向性を明確にすることが求められると三成教授は言う。
 「これまでの法学部教育は、法曹を目指すのか、あるいは就職を目指すのかという線引きが曖昧でした。しかし『法曹の養成機関』としての法科大学院が設置される以上、法学部が『司法試験の第一歩』であるという建前論にあぐらをかいていられなくなるのは必至です。これからの法学部では、従来のように幅広く法律全般に渡る教育を行うのではなく、法科大学院、民間企業、公務員、研究職など、学生のキャリアプランに応じて、企業なら私法系、公務員なら公法系に重点を置く、法科大学院を目指すのであれば法学の基礎を深く学ばせる、といったように、多様な教育メニューを提供していく必要があると思います」
 さらに、法科大学院の設置によって変わるのは法学部だけではないと予想される。
 大阪大では、教養教育を拡充することで、法学以外の幅広い教養を身に付けることができるカリキュラムを整備していくことも検討している。また、教養科目であっても専門的な内容を加えることで充実を図ろうとしている。それによって、専門知識に加えて幅広い教養と深い人間性、社会の問題に対する鋭い感覚を養うのだ。このような素養を持った学生こそが法科大学院の求めている人材なのであり、その先の実務の世界でも必要とされているのである。
 今後、学生のキャリアプランに応じた教育を行う大学が増えていけば、高校も安心して生徒を大学に送り出すことができるようになるだろう。同時に、法科大学院の設置に伴う大学側の変革を知ることは、より具体的な大学選びの一歩となるだろう。
 
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