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法科大学院の設立によって法学教育はどう変わるのか
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双方向の対話型授業「ソクラテス・メソッド」で論理的思考力を養う
 さて、肝心の教育内容はどのようなものになるのだろうか。
 従来の法学部の授業は、教員が一方的に講義をする形態が多く、特に六法科目は200~300人収容の大教室で行うものが多かった。それに対して、法科大学院における授業は教員と学生の対話が中心となる。判例などを素材に、教員と学生が問答を繰り返しながら双方向で学ぶ「ソクラテス・メソッド」と言われる手法だ。議論を重ねることにより、理解を深めていく学習方法で、論理的な思考方法を学ぶことができる。したがって、授業は少人数制が基本。大阪大では、それぞれの授業を20~30人に設定している。
 しかし、何よりの特徴はカリキュラムの密度の濃さだ(図2)。大阪大大学院法学研究科の三成賢次教授は次のように述べる。
 「一般に法科大学院における教育は、法学部で2年から2年半かけて行う専門的な教育を、1年間で行うくらいのペースで実施します。しかも対話型の授業を中心に、30人前後の少人数で授業を行うわけですから、相当ハードな内容になります。学生にとっては、かなりの努力と忍耐力を要することになるでしょうね。しかし、これを1年間続けることで、法学未修者であっても、2年制コースで入学する既修者と同等の力が付くはずです」
図2
 だが、授業のハードさは学生だけにのしかかるのではない。教員にとっても試練である。
 法科大学院では一つひとつの授業について、綿密なシラバスを作成するよう義務付けられている。適切なテーマ設定を行い、テーマに沿った判例や教材を用意する必要がある上に、すべての授業が「実務」に結び付くものでなければならないのだ。こういった形態の授業は、これまで日本の法学教育にはなかったという。つまり、ほとんどの教員にとって法科大学院で行う授業は未経験の領域なのである。
 「法科大学院には、全く法律の知識を持たない人も入ってきます。そういう学生に対して、常に研究の成果と実務とを融合させた授業を展開しなくてはなりません。シミュレーションの形で実際の授業を想定した研修を行ってはいますが、授業を通して我々自身が研鑽を積んでいくことになると思います」(三成教授)
 
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