ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
学校PR活動で教師の意識改革と指導力向上を図る
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諸々の改革を
スタートさせて2年目――。PRの効果は徐々に現れてきている。他の高校の教師が中学校を訪問した際、「最近の安城東は中学校との交流に力を入れているみたいですね」と噂にも上るようになった。
 しかし、こうしたPR効果以上に、同校にとって大きな収穫となったものがある。中学校との交流により中学生の実態をこれまで以上に把握できたことである。
 例えば、「公開授業」や「出前授業」における中学生のアンケートを見ると、「高校の授業は緊張感がある」「授業のスピードが速くて驚いた」といった意見が見られる。大学受験を目指して、緊張感を持ってどんどん進んでいく授業が当たり前だと思っていた同校の教師の多くが、中学生との意識のギャップに驚いた。また、02年度実施のアンケートで判明した中学生の学習時間の少なさも、教師たちの予想を大きく超えるものだった。
 「アンケートや『出前授業』は中学に対するPRの一環ではありましたが、実はその背後には、本校の教師の意識改革を促す意図もありました。現在の中学生の気質や学習に対する姿勢は大きく変わってきています。そうである以上、今の中学生の実状に合った指導体制を構築していかなければなりません。そのためには、まず教師の意識を変えていくことが必要です。中学生の変化を知ることで『指導方法を見直さなければいけない』という意識を高めてもらいたかったのです」(大見先生)
 一連の取り組みの結果、同校の教師の中学生に対する意識は大きく変化した。新1年生に対しては、授業の展開をもっと工夫していこう、週末の課題の出し方や問題のつくり方などについて積極的に改善していこうという気運が盛り上がっていった。
 03年度から急遽、新1年生に対して予習の仕方を指導するガイダンスを実施することになったのも、そうした教師たちの意識向上の表れだ。同ガイダンスでは1日がまるごと補習に充てられる。国語・英語・数学の3教科を各2時間行い、前半の1時間で予習の仕方を教え、後半は実際に予習をやらせてみるのである。中学から高校への橋渡しとして、来年度以降も、継続していく予定だという。
 さらに、指導力向上の面でも中学との連携が大きく寄与している。
 「『出前授業』で中学生の反応を直に見ることで、授業の中で難しい言葉を使いすぎていないかとか、どういう風に話を膨らませれば興味を引くのかといったことを肌で感じることができました。1年生の授業をする上で、この経験は大いに生きてきます。高校1年生といっても、ついこの間まで中学生だったわけですからね。中学生と接するように指導しつつ、かつできるだけ早く高校生レベルの学習ができるように指導することを心掛けています」(森先生)
資料2
 広報活動から始まった同校の取り組みは、中高連携の施策を通して中学生の実態を把握し、それが教師の意識改革や指導力向上に発展していくという好循環をもたらしている。
 さらに、尾崎先生は次のように語る。
 「本校の取り組みがきっかけになって、中学生が高校の学習に対する心構えを持ってくれるようになれば嬉しいですね。『公開授業』や『出前授業』を通して、中学校で学ぶ基礎の大切さ、予習の大切さなどを実感してもらい、高いモチベーションを持った生徒がどんどん入学してくるようになれば、それが一番の成果なのではないかと思います」
写真 出前授業では、いかに中学生の興味を引くかが勝負。プロジェクターを使った「目で見る物理ダイジェスト」、宝くじを例に確率について学ぶ「宝くじを数学する」などが行われた。
 
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