広報活動の
対象は地域の中学教師や中学生、保護者である。広報のねらいは「変わろうとしている」同校の姿を地域に知ってもらうこと、地域の声を取り入れて学校を改善していくこと。これからの安城東高校は「待っているだけではない」ということを積極的にアピールしていこうというものだった。
そこで第一に着手したのが、近隣の中学教師、中学生、保護者を対象としたアンケートである。01年度中に対象や内容、配付方法などの詳細が固められ、02年度の新学期に実施。教師用200部、生徒・保護者用800部、計1000部に及ぶアンケートが配付された。取り組みを主導した前企画プロジェクト主任の尾崎誠司先生は、次のように述べる。
「アンケートを実施すること自体が、本校のPRになると思いました。そのため、多くの中学教師や生徒の目に触れるよう、安城市だけでなく、隣の岡崎市の中学校も含めるなど、対象校はできるだけ広範囲に設定したのです。また調査対象のうち、中学生については進路を明確に定めていない2年生を対象にしました。早い時期にアピールしておけば、将来進路選択する際、本校が選ばれる可能性が高くなるのではないかと考えたからです」
アンケートでは、高校を選ぶ基準や同校のイメージ、中学校での学習状況などについて聞いた。実施初年度ということもあり、回答の中には、前述の中学教師のように否定的な意見も見られたものの、中には『地域の意見を取り入れようとする姿勢を歓迎する』といった前向きな声も聞かれた。
アンケートの結果を受け、同校ではさらに攻めのPRを展開することにした。今回、調査の対象となった中学生が、まだ明確な進路意識を持ち辛い2年生だったとはいえ、同校のイメージに対して「分からない」と答えた生徒が、予想外に多かったためだ。そこで、アンケートの結果を基に進学実績や部活の実績、生徒指導に対する理念など、生徒や保護者が知りたがっている情報、及び同校が中学生や保護者に知ってほしい情報をまとめて、広報誌「安城東高校だより」を作成、近隣の中学校に配布した(資料1)。 |
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「アンケートの回答には、『生活指導が厳しい』という指摘も少なくありませんでした。しかし、本校は大学進学を目指して勉強している生徒がほとんどですから、生徒が落ち着いて勉強に専念できるよう厳しく指導するのは当然です。そのため広報誌には、そういった本校の指導方針をはっきりと示しました。無批判にアンケートの意見を取り入れるのではなく、明確に方針を示す方が、かえって保護者の方は安心して任せてくれるのではないかと思ったからです」(尾崎先生) |
アンケートの
他にも、広報活動の一環として実施された取り組みがある。中学生を招いて高校の授業を見学させる「公開授業」と、同校の教師が中学校に出向いて授業を行う「出前授業」だ。
「広く地域に訴えるには、アンケートや広報誌は効果的です。しかし、実際の授業を体験してもらうことが、何よりのPRになるのではないかと思いました」(大見先生)
中でも同校が力を入れているのは「出前授業」だ。「地域に開かれた高校」が叫ばれて久しい今日、自校の授業を地域住民に公開する高校は少なくない。だが、同校ではそこから一歩進んで、高校教師自らが中学校に出向き、中学生の前で高校の入門的な内容の授業を行う。自分たちのフィールドではない上に、進学校に対して厳しい目を向ける中学教師を前にしての授業だ。教師たちに掛かるプレッシャーは大きい。初めて実施した02年度は、同校の教師8名が参加した。地歴科担当の森彰男先生は、その時の様子を次のように語る。
「後ろから授業の様子を見るだけの『公開授業』と違って、『出前授業』では我々が直接中学生を指導します。そのため、中学生にとっては高校の授業がどういうものかを肌で感じる良い機会になったようです。『中学校と同じように勉強していては、高校ではついていけないよ』と厳しく指摘する教師もいましたが、中学生の評判は良かったです」
事実、「出前授業」を実施した安城北中学校からの03年度入試の志願者数は、前年の倍近くに膨れ上がったという。現在は対象校は安城北中学校1校だが、他の中学校からの要望も増え、次回実施時には、「公開授業」「出前授業」とも対象校を増やす予定だという。 |