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新入生の学力変化の実態とその対策
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データから考察する新入生の指導
学習習慣が変化したと言われて久しい近年の新入生。
彼らの学習習慣は実際にどこが変わり、どこが変わっていないのだろうか。
近年のデータから、新入生の実態と、今後の指導方針を探る。
1.学習習慣の実態
加速する生徒の学習習慣の変化
資料1
 新入生については、以前より学習習慣の未確立が問題視されていた。だが、今回のデータによると、中学のときの平日の学習時間についてはそれほどの低下は見られていない。むしろ、資料1に示した通り、以前に比べて「30分以下」しか学習しない生徒が減少し、「2時間以上」学習するという生徒が増加している。近年、家庭ではなく、塾の自習室などで学習する生徒の増加が目立っている。多少、資料1の中には塾での学習時間も含まれているものとは思われるが、新入生の平日の学習時間は、近年に比べれば増加傾向にあると言えよう。
 ところが、肝心の学習方法に目を向けてみると、新入生の学習習慣が必ずしも望ましいものではないことが明らかになるようだ。例えば、学習の中で、分からない点や疑問点があった場合の対応に着目してみると、「分からなくても、自力で答えを出そうと考えてみる」という生徒が減少する一方で、自分で考える前に「すぐに解答を見て確認する」という生徒や、「質問して解決する」という生徒が増加しているのである。特に後者は、英数国の3教科すべてにおいて、2002年度から急激にその割合を増している(資料2)。
資料2
 さらに、定期試験後の対応について着目してみても、「不正解の箇所を確認し理解する」という生徒が急激に減少する一方で、「不正解の箇所を確認するのみ」という生徒が急増している(資料3)。
資料3
 「一応机には向かっているものの、受身の学習習慣しか確立できていないのではないか」「最近の生徒はものおじせずによく質問しに来るが、正しい学習方法が身に付いていないのではないか」という声を時折先生方からお聞きするが、以上のデータでは、そうした実感が裏付けられた形となっている。
 ここ数年、多くの高校が家庭学習習慣の確立を目指し、新入生オリエンテーションなどに取り組んでいるが、今後は「家庭学習の習慣付けをする」ことに加え「正しい学習方法を身に付けさせる」ことを、より重視していく必要があるのではないだろうか。


塾通いの生徒が急増
 自宅での学習内容を、さらに詳細に見て行きたい。資料4に示したように、英数国共に「予備校・塾に関連した学習が中心」と答える生徒が増加していることが分かる。
資料4
実際、通塾率は、近年一貫して上昇傾向にあり(資料5)通塾と学習内容が密接に関連していることが読み取れる。
資料5
前述の「分からなくても、自力で答えを出そうと考えてみる」という生徒が減少していることと合わせて考えると、通塾によって、学習習慣の未確立や受身化に拍車が掛かっているケースも少なくないのではないかと思われる。
 もちろん、すべての学習塾を同列に語ることはできない。塾を活用して能動的な学習習慣を身に付けている生徒も少なくないと思われるからだ。「自ら学びへ向かう力」や「試行錯誤した経験から正しい学習方法を見つけだす力」をいかに身に付けさせるかは、今後とも重大な課題であろう。


教科書の変化が学習方法に影響
 新課程に伴う教科書の改訂は、生徒の学習方法にも大きな影響を与えているようだ。特にこの影響が著しいのが英語・国語である。近年の教科書では、欄外に語句の意味が書かれていたり、巻末に単語の意味が一覧となっていたりすることが珍しくないが、こうした教科書の変化が「辞書活用の低下」につながっているとも言われている。
資料6
 資料6に示したのは英語のデータであるが、「不明な語句は教科書ガイドで確認」するという生徒が増加する一方で「辞書で文意に適当なものに見当をつけ、例文を確認」するという生徒が減少している。同様の傾向は国語でも見られており、英単語や古語の習得に関連した学習方法に、近年明らかな変化が現れていることが見て取れる。
 
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