ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
新入生の学力変化の実態とその対策
   9/9 前へ


POINT3
学校行事化と管理職の参加により実効性を高める
 指導対策案に実効性を持たせるため、同校では「学力検討会」を学校行事化すると共に管理職の参加を必須としている。
 「『学力検討会』は、各学年とも年4回実施しますが、いずれも学校行事として位置付け、参加できない教師がいないようにしています。また、当日は短縮授業にして、話し合いの時間を十分確保する他、学年ごとに実施日を少しずつずらして、必ず私か教頭が参加できるようにしています。そして先生方には、指導結果に対する責任と反省を強く求めます。議論の内容に責任を持ち、指導・対策の実行を厳しく求めることは当然のことなのです」(水島校長)
 さらに、「学力検討会」で話し合われた内容は、学年集会などを通じて生徒にもフィードバックされる。「なぜ今、この指導を行うのか」を明確にし、生徒の学習意欲を喚起するためだ。また、「学力検討会」の内容は生徒に対してだけではなく、保護者会などを通じて保護者にも伝えられるという。アカウンタビリティ(説明責任)を果たすことで学校と保護者の協力関係の構築にも一役買っているというわけだ。


新課程対応を進める原動力に
 以上のように運営上の工夫を徹底することで、同校の「学力検討会」は新課程対応を進める上でも大きな威力を発揮している。実際、03年度7月に行われた1学年第一回の「学力検討会」では、先の教科別座談会でも問題になった通り、同校でも国語において「一般常識の欠如、語彙力の不足」が浮き彫りになった。同校では、前年度までは週3回だった朝読書の時間を、現1年生から週5回に増やして実施している。
 「実は、朝読書を2回増やす分の時間は、英語と数学で従来実施していた朝の小テストを取りやめることによって捻出しました。もちろん、教科として小テストの時間がなくなることは頭の痛い問題なのですが、『国語力の低下はすべての教科に共通する課題』というコンセンサスが事前に得られているので、すぐに学年として歩調を合わせた対応を行うことができました。英語と数学の小テストは、別枠で時間を見つけて実施する予定です」(梅元先生)
 また、数学においては学力格差の拡大が大きな問題としてクローズアップされたが、これも習熟度別授業による対応が決定済みである。
 「2、3年次では類型に応じて習熟度別授業を実施することを考えています。入学時点での学力格差は、年々拡大してきているようなので、今後とも新入生の学力については注意深く見守っていきたいと考えています」(有村先生)
 このように、同校の「学力検討会」は新課程対応を進める原動力として欠かせないものとなっている。だが、今後の課題がないわけではないと、水島校長は指摘する。
 「今後求められるのは、検討された対策を先生方が責任を持って実行していくことです。そのためには、実施した取り組みが本当に効果を上げているかどうかを検証することが不可欠になってくるでしょう。また、本校が学力向上のために行っているのは、『学力検討会』だけではありません。週プラン指導や生徒による授業評価の導入など、数多くの取り組みを実施中です。今後課題となるのは、それら相互のつながりを整理して、より高い教育効果を発揮していくことだと考えています」
 効果検証の導入、そして他の教育活動との相互関係の整理。この課題が解決されたとき、小林高校の取り組みがより完成度の高いものになることは間違いないだろう。
 
このページの先頭へもどる
   9/9 前へ
 
このウェブページに掲載のイラスト・写真・音声・その他のコンテンツは無断転載を禁じます。
© Benesse Holdings, Inc. 2014 All rights reserved.