ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
新入生の学力変化の実態とその対策
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POINT2
事前準備に時間を取り分析内容のレベルアップを図る
 同校の「学力検討会」では、検討の材料となる生徒情報に関する資料についても工夫を凝らしている。通常、学力検討会や分析会の資料というと、模擬試験の成績帳票や各分掌が実施したアンケートなどがそのまま使われるケースが一般的だが、同校ではそうした「素データ」をそのまま使用することはしない。その代わり、会議一週間前には参加者全員に「素データ」が配付され、学年主任、学級担任、教科担任がそれぞれの立場から、資料2に示したような「分析シート」に現状分析と今後の対策をまとめる。
資料2
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そして、進路部がそれらを分析用資料として集約した上で「学力検討会」に提出するのだ。これにより、検討会で改めてデータを読み直す時間が節約され、「問題の原因と対策を考える」という次元で素早く議論を進めることができるのである。
 「分析シートには『現状と問題点』と『今後の対応』という二つの観点を盛り込むことだけは進路指導部から要望しますが、分析の細かな方法については先生方の創意・工夫にお任せしています。同じ模試の成績帳票を見ても、教師によって学力層別に分析したり、設問ごとの正答率に着目したりするので、問題の所在をより明確にできます」(水渕先生)
 教師に事前に配られる分析用資料の内容は、模試の成績だけではなく、進路指導部が実施した「進路志望調査」や、教務部が実施した「学習実態調査」など多岐に渡る。これだけの資料を分析する教師の負担はかなりのものになるが、数学科主任の有村尚行先生は、その負担は不可欠なものだと言い切る。
 「私は2年前に本校に赴任したのですが、当初は分析作業を行うだけでも大変でした。しかし、分析結果を教師が互いに検討し合うことで、分析のレベルを高めていくことができますし、何より教師一人ひとりが自分の力量不足を自覚できます。『学力検討会』の実効性を高める上で、このプロセスは欠かせないものだと考えています」
 管理職を除き、「学力検討会」では、原則的に参加者全員が「分析シート」に基づいて自らの事前分析の結果を発表する。そのため「学力検討会」1回当たり、10数名もの教師が分析結果と今後の対応を発表することになる。具体的な「叩き台」があるので、すぐに内容の濃い話し合いができるわけだ。また、議論が紛糾しないように、司会に当たる進路指導部の教師は、事前にこれらの資料すべてに目を通して議事進行の流れを準備しておくのだという。とは言え、活動初年度からこうした緻密な運用が可能だったわけではない。「学力検討会」の意義について共通理解が得られ、充実した分析資料が作られるようになるまでには、かなりの時間を要したという。
 「その間は、かなり厳しいことも先生方にお願いしました。しかし、膨大なデータを分析することは、必ずや教師個々人の力量の向上につながります。実際、最近ではこちらが感心するような分析がよく見られるようになっています」(水渕先生)
 
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