ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
新入生の学力変化の実態とその対策
水島忠臣
宮崎県立小林高校校長
水島忠臣
Mizushima Tadaomi
教職歴38年目。同校に赴任して延べ22年目。「厳しいけれど授業は分かる、生徒に好かれる教師になることを先生方に求めています」

水渕一成
宮崎県立小林高校教諭
水渕一成
Mizubuchi Kazunari
教職歴31年目。同校に赴任して6年目。進路指導部長。「可能性を信じて、大きな目標に向かう生徒を育てたい」

有村尚行
宮崎県立小林高校教諭
有村尚行
Arimura Takayuki
教職歴15年目。同校に赴任して2年目。数学科主任。「チャレンジ精神旺盛な生徒を育てたい」

梅元和宏
宮崎県立小林高校教諭
梅元和宏
Umemoto Kazuhiro
教職歴9年目。同校に赴任して4年目。1学年主任。「日々努力していく大切さを生徒には伝えたい」
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事例紹介 ● 宮崎県立小林高校
生徒把握を指導改革につなげる「学力検討会」
新入生に対する対応を効率的に進める上で、教科間の連携を図ることの重要性が改めて問い直されている。効率的に教科間の調整を図るためにどのような手法・考え方が求められるのか。宮崎県立小林高校の「学力検討会」を基に考察してみたい。
状況を踏まえた指導を目指す「学力検討会」
 宮崎県有数の進学校として知られる小林高校は、生徒状況の細かな把握をベースとした指導に力を入れてきた学校である。生徒の学習状況を毎日把握するための「週プランノート」の作成や、教師の手作り課題による課題学習などは、本誌でも過去に紹介したところである(本誌01年4月号「指導変革の軌跡(12)」参照)。
 そんな同校では今、1998年度より実施している「学力検討会」を中心に、積極的な新課程対応を進めている。同種の取り組みは全国各地で行われており、「学力検討会」という名称自体に目新しさがあるわけではないが、同校の取り組みで注目すべきは、その体系性、実効性についてである。実際、同校の進路指導部長を務める水渕一成先生は、「学力検討会」の意図を次のように説明する。
 「確実に学力伸長につながる指導改善を行うためには、単に生徒の学力や学習状況を把握するだけでは不十分です。むしろ、本当にやるべきことは『把握した状況に対して、どのような解決策を考え、実行するか』ではないでしょうか。『学力検討会』は、生徒の学力を把握する場、先生方の研修の場であると共に、具体的な指導対策案を考える場でもあるのです」
 このような目的を持った同校の「学力検討会」の概念図を資料1に示した。最終的な指導改革に至るまでの流れが、校内で体系化されていることがうかがわれる。
資料1
 では、こうしたプランをうまく機能させるために、同校ではどのように「学力検討会」を運営しているのだろうか。以下にポイントを整理していきたい。


POINT1
学年団全員が参加し多面的な視点で課題を捉える
 同校の「学力検討会」の特色としてまず挙げられるのが、その参加人数の多さである。同会は基本的に学年ごとに実施されているが、各担任はもちろんのこと、教科の担当者、学年主任、進路部長、副部長、さらには管理職までが参加する。これにより一つのデータに対する多面的な分析が可能になると共に、指導改革案を考える際にも、より広範な視点からの検討が可能になるのだ。
 「学級指導、教科指導、学年指導の足並みが揃わなければ、絶対に『学年として』の成績を上げることは不可能です。立場の違う教師が集まり、複数の視点から生徒の学力を分析し、議論することによって初めて実効性のある指導改革案が準備できるのです」(水渕先生)
 また、教科、分掌を越えた教師が集まることによって、情報や改革方針の共有・調整が迅速に行える点も注目できるだろう。特に会議中に出た指導案に対し、その場で教科間の調整を行うことができる点は、実際に指導改革を進めていく上で大きな力になっている。1学年主任を務める梅元和宏先生は、その意義を強く実感している教師の一人である。
 「『学力検討会』があることによって、学年としてどの教科のどの部分に力を入れるとよいかが明確になります。ですから、特定教科の成績が不振だったような場合、教科を越えて合理的に課題量や補習の時間等を融通し合ったり、調整することができます。それに、関係者が一堂に会しているので、普通なら一人の教師の思い付きで終わってしまうようなことが、学年全体の取り組みとして、その場で検討できます」
 実際、数年前にある学年の一クラスの数学の成績が不振だったときには、他教科の理解と協力を得た上で、即座にクラスを三つに分けた習熟度別授業の実施が決まったという。また、その際には、クラス分けした場合にそれぞれのクラスを誰が担当するのかまで決めることができた。水島忠臣校長はこうした迅速な意志決定の重要性を強調する。
 「この時は教師不足を補うために、私自身も数学のクラスを一クラス担当しました。出席した教師全員で問題を共有していくことが、指導改革を迅速に進める上で何より重要なのです」
 あらゆる垣根を越えて関係者が全員参加するからこそ、このような取り組みが可能になったのである。
 
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