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自由競争が電力ビジネスの在り方を変える
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企業が求める人材とは
東京電力株式会社
自由競争時代に必要な主体性とチャレンジ精神
 電力小売り自由化の動きと、それに伴う兼業規制の撤廃(00年まで電気事業者が他の事業を営もうとする際、監督官庁の許可が必要だった)の流れを受けて、電気事業の旗手である東京電力の事業領域は大きく拡大した。インターネットなどのIT事業、省エネ診断や液化天然ガスの運搬事業など、「電力」の枠を越え他分野へ積極的に進出している。
 こうした事業環境の変化を踏まえ、同社では人材要件についても転換を図った。
 「これまでの当社は、公益事業の担い手として、どちらかと言えば保守的な企業体質でした。社員の採用に関しても、『安定供給』や『信頼性の確保』といったキーワードの下、『責任感』や『協調性』などを人材要件としてきました。しかし、激変する事業環境に対応するには、そうした普遍的な能力に加えて強い変革意欲が必要です。そこで自由化以降は、『主体的に行動する力』『チャレンジ精神』などの観点を強く意識して採用を行うことにしたのです」(労務人事部・平出信人氏)
 こうした人材要件は技術系職・事務系職に共通している。採用に際しては面接を重視し、求める人材要件についての精緻な採用基準を設け「人物本位」を心掛けているという。技術系職はこれに加えて電気や通信、機械など一定の専門性を持った人材を募集している。電力会社とは言え、必ずしも「電気」一辺倒というわけではないのだ。
 「電力会社というと、発電や送電などのいわゆる『強電』を想像する方も多いかも知れません。もちろん電力会社である以上、発電所の建設や送電線のメンテナンス、時には営業においても電気の知識は必要です。しかし事業の多角化に伴い、近年では通信や情報、環境などの専門知識を持つ人材も幅広く求めています。また、コストダウンのための素材の研究、省エネのための家屋の設計や空調の研究などの業務も増えています。『東電に来ればどんな仕事でもできる』と言っては大げさかも知れませんが、それくらい東京電力の事業領域は広がっているのです」(平出氏)
 社員教育システムの抜本的改革も、同社の変革を端的に表している。社員自らが意欲的に能力の向上を図り、やりたい仕事へチャレンジできるよう、研修制度を見直すと共に、人材配置のシステムも改めた。
 従来は、課長研修や副長研修など、同じ役職に就いている者同士が一斉に研修を受ける画一的なシステムだった。それを、マネジメントやロジカルシンキングなど多様なメニューから、社員が自ら選んでスキルを磨く自己啓発型の研修に変えた。さらに「プラスONE資格挑戦運動」を実施し、社員全員が最低一つの資格を持つよう奨励している。社員に様々な分野での専門知識を深めさせると共に、資格取得に挑むことで仕事への意欲を高めさせようというのだ。また、人材配置では「社内求人制度」「社内求職制度」を並行して導入している。これは、社員の意欲と能力を最大限に発揮させ、やりたい仕事を見つけるための仕組みとして整備されており、人材配置の円滑化を図っている。
 「研修は希望者を募る形で行われていますが、希望者が多く社員には良い刺激になっているようです。社内求人・求職制度も好評で、募集するプロジェクトや部署によっては定員の10倍もの応募があるほどです。社員のやる気も高まりますし、適材適所により会社全体の活性化にもつながり、良い形で相乗効果が出ていると思います」(平出氏)
 東電に来ればどんな仕事でもできる-。東京電力の事業領域の広がりは、電気事業全体の可能性の広がりでもある。高校・大学で修得した知識や技術をどのように生かすのか。それを考えるのは企業ではなく、チャレンジ精神を持った「人材」に他ならない。
 
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