ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
教師ネットワークを日々の指導改善に生かす
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 「これは、高知の英語教育を変えるチャンスになるかも知れないな」
 1998年、全英連(全国英語教育研究団体連合会)の01年度全国大会が高知県で開かれることが決定したとき、長崎政浩先生は内心期するところがあった。当時、県の教育センターの指導主事として、主に教員研修の企画・運営を担当していた長崎先生は、その運営に携わる中で、研修や研究大会を開いても、それが日常の授業改善にうまく結び付いていかないという壁を感じていた。例えば、ある研究大会で公開授業が行われたとする。発表者として指名された教師は熱心に授業研究を行い、公開授業は一定の成功を収める。しかしその成果は、公開授業を見学した他の教師の実践に生かされることはなく、翌日以降はいつも通りの授業が繰り返される。そんなケースが少なくないのだ。
 そこで長崎先生は、全英連高知大会を単なるイベントに終わらせないために、発表者として指名された教師だけが研究を行うのではなく、できるだけ多くの教師を希望制で集めてグループ研究をするという形を考えた。多くの教師が主体的に参加することで、研究内容が深まるばかりでなく、大会終了後にその成果を自校での実践に生かしてくれることを期待したのである。だが、長崎先生はさらにその先を見据えた青写真を描いていた。
 「研究内容を深めること以上に重視したのは、大会に向けたグループ研究をきっかけとして、教師ネットワークをつくり上げることでした。そうすれば、大会後も日常的に教師が互いに授業改善についての意見交換を行いながらレベルアップを図るということが、行いやすくなりますからね」
 長崎先生は、英語部会のスタッフと手分けをして、高知県の公立・私立の高校で教壇に立っている二百数十人の教師全員に、趣意書ともいえる手紙を送付した。「大会に向けて研究プロジェクトを立ち上げます。一緒にやりましょう」というものだ。全英連高知大会の初日に行われる公開授業や、「コミュニケーション活動」「情報通信ネットワークの活用」などの各分科会のテーマについて、それぞれ研究プロジェクトを設置。興味を持った教師に、その中から自分が参加したい研究プロジェクトにエントリーしてもらう形にした。
 すると、何と県内の全教師数の約4分の1に当たる50~60人の教師から参加したいという答えが返ってきたのである。研究プロジェクトによっては、10人近くの教師が参加希望を申し込んだものもあった。「自主的に勉強できる場があったら参加したいという問題意識を、多くの先生方が持っていたということでしょうね」と長崎先生は分析する。
 一方で、長崎先生を中心とした英語部会のスタッフは、00年2月から定期的に、高知県内各地で高校教師対象の「英語教育セミナー21」を開催した。
 これは、大学教授や県外の高校教師を招いて、英語の授業を魅力的なものに変えていくための実践例を紹介したり、教師同士で授業アイディアの情報交換をしたりと内容は様々だ。これまで計10回以上のセミナーを行ってきたが、セミナー実施の根底にあるのは、全英連高知大会を通じて実現したい教師ネットワークづくりの魅力や連携の必要性を、多くの教師に実感してもらいたいという熱い思いであった。
 
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