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大学入試改革の意図を読み解く
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前期・後期の定員配分が変動する可能性も
――大学の個別入試については、現在の後期日程の在り方も問題視されています。本来は、前期日程と合わせて受験機会の複数化を狙った制度ですが、実際には倍率が十数倍にもなったり、あるいは受験放棄が多数に上るといった問題を抱えています。
 まさにその通りで、「分離・分割」方式とは言いながら、後期日程の出願動向は、前期日程の動向に大きく左右されています。つまり後期日程は、前期日程から本質的に「分離・分割」されていないわけです。
 国立大学協会では、現在の「分離・分割」方式は06年度入試以降も当面維持しますが、大学によってはAO入試などの枠を広げて、前期・後期の定員配分を弾力化できるようにしたいと考えています。これは、「前期7割、後期3割」という定員配分の現状を見直し、各大学の裁量の幅を広げようという考えでもあります。
――実際、東京大などは「前期日程に一本化する」という意見をほのめかしています。
 国立大学協会の取り決めは必ずしも拘束力があるわけではないので、もしどこかの大学が大幅な定員配分の見直しを行った場合には、他大学にも影響することが考えられます。今後数年の間に、入試環境の大幅な変動があるかも知れません。
――高校の進学指導にも大きな影響を与える問題だけに、早急に方針が固まるとよいのですが…。
 もし、前期・後期の定員配分が弾力化した場合、多くの大学は前期日程への傾斜を強くすると思います。と言うのも、実受験者数が読みきれない後期日程の実施に関しては、作問、会場準備共に大変な負担がかかっているからです。04年度からの独立行政法人化に合わせ、各大学での検討も本格化してくると思います。


新課程生への対応はどのように進められているのか
――06年度に向けて、様々な入試改革が進められるわけですが、例えば入試問題の作問一つをとっても、高校の新課程に対する検証が不可欠だと思われます。大学側での対応状況について教えて下さい。
 正直、対応は始まったばかりというのが現状ですね。教科書研究などをスタートさせているところもありますが、全学的な研究体制となると、まだ着手しているところは少ないと思います。しかし、入試制度改革は、実際に受け入れる学生の資質を抜きには考えられません。特に教育システム全体に「接続」が重視されるようになる今後は、高校と大学が、その接点において「どんな学生を育てたいのか」あるいは「受け入れたいのか」をきっちり考えていかねばなりませんね。
――その意味では今後、「高大接続」というキーワードが益々重要になってきますね。
 これまで「高大接続」と言うと、体験授業や模擬講義の実施が中心でした。しかし、今後の入試改革の進展に伴って「教育システム」としての高大の一貫性が求められるようになれば、「大学入学後にどんな学力が求められるのか」という、より本質的な部分に対する議論をスタートさせることが必要になってくると思います。これまでそれは「入試」という形で大学側から一方的に提示されてきたわけですが、高大が互いに協議会を設置するなどして、継続的に議論を行える体制を模索する時期にきているのではないかと思います。
――本日はお忙しいところありがとうございました。
 
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