ベネッセ教育総合研究所 ベネッセホールディングス
COEは大学教育をどのように変えるのか
福井康雄
名古屋大大学院理学研究科教授
総長補佐 研究担当
福井康雄
Fukui Yasuo

坂神洋次
名古屋大大学院生命農学研究科教授
総長補佐 社会連携担当
坂神洋次
Sakagami Youji
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全学体制でCOE採択に向けて取り組んだ名古屋大
 2003年7月17日、平成15年度「21世紀COEプログラム」の審査結果が公表された。これにより、当初予定された人文・社会科学から自然科学までの10の学術分野すべてについて、研究拠点の指定が完了したことになる。この結果については各種マスコミ報道などを通じて様々な解釈が加えられているが、本誌編集部が着目したのは名古屋大の結果である。02年度に7件、03年度に6件の指定を受けた名古屋大は、採択総件数で見ると、東京大、京都大、大阪大に次ぐ第4位(図1)。
図1
さらに、教員一人当たりの採択件数で見ると第1位となっている。図2に示したのは、これまで主要な研究費の支給ルートとなってきた「科学研究費補助金」の配分額であるが、COEの採択件数は、この序列を覆した。
図2
 名古屋大がこのような成果を上げた背景には、同大がCOE採択に向けた全学的な対応をいち早く進めてきたことがある。福井康雄総長補佐は「その背景にあったのは全学的な危機感だった」と語る。
 「COEがまだ、遠山プランによる世界最高水準の大学育成プログラムである『トップ30大学』と言われていた01年度から、本学ではそれに対する全学的な対応が進められてきました。当時はまだ内容によく見えない部分があったのですが、『内容がどうであれ、大学ランキングとして受け止められるだろう』と、多くの教員が認識していた点が大きかったと思います。私自身、『実利面はどうあれ、申請しないこと自体がデメリットになる』という印象を強く持ちました」
 そんな同大のCOE対応に中心的な役割を果たしたのが、各分野の教授10数名からなる「アカデミックプランの具体化に関するワーキンググループ(以下、ワーキンググループ)」である。01年度に組織された同グループの位置付けについて、坂神洋次総長補佐は次のようにまとめる。
 「このグループは、本学が00年度に掲げた長期目標である『名古屋大学学術憲章』を具体化するために設けられました。『名古屋大学学術憲章』の大きな柱は『世界屈指の知的成果の生成と、勇気ある知識人の育成』です。COEの学内選定は、このような方針に照らした上で行われました」
 では、COE申請に向けた議論を通じて、名古屋大ではどのような動きが見られたのであろうか。以下、主なポイントについて見ていきたい。
 
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