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事前に学習方法を教えることで自ら学ぶ力を習得させる
生徒の自己分析以外にも、教師は生徒に対して様々なアドバイスを行う。中でも「学習内容・方法のアドバイスは欠かせない」と、学力向上フロンティアスクール推進委員の池田真弓先生は指摘する。
「実験や講座以外は、ほとんど調べ学習のスタイルを取っています。そのため、生徒には事前に学習方法のヒントを教えています。国語を例にとると、読解力を付けたい生徒であれば、教材について5人くらいで討論してみる方法、自分でテスト問題を作ってみる方法など、この学習方法で何を克服したら読解力につながるのかということを教えておくのです。こうすることで、実際の学習活動の場面において、その都度生徒に学習方法を教えたり、また生徒から質問が殺到したりするということはありませんね」
このように教師の側面支援を受けながら、生徒は自主的にカリキュラムを作成していくわけだが、それだけで果たして長大な時数のカリキュラムを作成することができるのだろうか。
「もちろん、何十時間というカリキュラムを最初から一度に作ることはできません。多くの場合、まず前半だけを作らせてみます。年度途中の教科ごとの中間発表会で、生徒に今まで学んできたことやカリキュラム作成でうまくいったことなどを発表させるので、そこで他の生徒の取り組みを参考にして、後半のカリキュラム作成に反映させるのです。また生徒によっては、カリキュラムを進めていく上で、必要に応じて微修正をする者もいます。こうした修正を繰り返すことで自己分析や自己理解、計画立案能力などを身に付けられるのだと考えています」(笹原先生)
生徒一人ひとりのポイントを押さえた指導
実際の学習活動は、基本的には同一教科を選択した生徒が一つの教室に集まって行う。例えば理科では大きく、講座を受講する生徒、実験・観察を行う生徒、自学自習をする生徒の三つの集団に分かれる。つまり、教室のある場所では担当教師を中心に講座を受講する生徒の集団があり、別の場所ではフラスコ片手に実験を行う集団、参考書や専門書を使って調べ学習をする集団がいるといった具合だ。
さらに授業に際しては、「イオンについて」がテーマの生徒であれば「化学反応式をきちんと書かせる」、また「四季の天気」がテーマの生徒であれば「西高東低の気圧配置の意味を気団名と関連付けて捉えさせる」といったように、生徒一人ひとりに対して、学習内容に応じた指導や支援のポイントを設定している。
「選択教科は決して生徒任せの学習ではありません。学習計画を立てて学習を進めるのは生徒自身ですが、教科のポイントを押さえながら生徒の力を伸ばしていくのは必修教科同様、教師の役割であることに変わりはないんです」(今野先生)
こうしたきめ細かな指導を徹底した結果、選択教科に対する生徒の評価は総じて高い。生徒が自らの必要性に応じて取り組んでいるため、意欲や集中力が高まると共に、自分で学習する力が付いているのである。また教師の側においても、目標の持たせ方や配慮する点など、指導のための視点が明確になった点で大きな成果と言える。
では、今後の課題はどの辺りにあるのだろうか。池田先生は次のように述べる。
「実施2年目ということで、『補充・発展学習』の補充的な部分の位置付けや、実際の学習活動におけるクラス編成、また指導手法の普遍化をどう図るかなど問題は山積しています。また、学年が進むにしたがって、どうしても受験の方向に生徒の意識が行ってしまい、点数を意識するようになります。その中においても、教科の楽しさや価値など、選択教科を通じて教科の魅力に迫っていきたいですね」
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選択教科における各中学校の裁量が大幅に拡大した現在、同校に限らず全国各地で学校の特色を生かした取り組みが広がりつつある。今回紹介した事例も、ほんの一例にすぎない。
高校としても、できるだけ自ら足を運んで地域の中学校の取り組みを知り、中学校の変化を肌で感じることができれば、新入生の指導計画立案の有効な手立てとなるのではないだろうか。
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