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ゲノム創薬が医薬品の創製に革命をもたらす
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企業が求める人材とは
武田薬品工業株式会社
目標達成に向けて諦めずに進む粘り強さが成果を生む
 武田薬品工業は、1781年創業の老舗企業。医薬品売上高で国内首位を独走する業界のリーディングカンパニーだ。製薬会社だけに、特に研究職は薬学部出身者が多いのかというと、実はそうではないらしい。総務人事センターの永井照久氏は次のように述べる。
 「薬を創る過程においては、薬の芽となる物質の探索、合成、薬効薬理、安全性、生産を行うための工業化研究など、川上から川下まで、様々な知識・技術が必要です。そのため研究職の出身学部は、薬学部はもちろん理、工、農、獣医など幅広いですね。ただし、採用は修士課程修了以上が原則です。薬学部に限らず、各研究所が採用を必要とする分野での専門知識を有しているかどうかが、選考をする上での前提となります」
 一方、営業職の採用は「学部卒以上であれば可」と広く門戸を開いている。
 製薬会社の営業職はMR(医薬情報担当者)と呼ばれ、医師や医療関係者へ医薬品の有効性、安全性などの情報を提供・収集・伝達するのが主な職務だ。生命にかかわることだけに、自社製品の副作用に関する情報も正確に提供し、医薬品の適正な使用を推進していく。公共性の高い仕事に従事する者として、高い倫理観が求められるのである。
 そうした専門性の高い職種だけに、MRに対しては研修が必須だ。入社から配属までに450時間以上、配属後も年間40時間以上の研修が求められている。
 「当社においても配属までの半年間に、生理学や薬剤学などの基礎教育、自社製品の知識はもちろん他社製品との比較も修得する製品教育、商品説明や質疑応答のロールプレイ、プレゼンテーションなどを学ぶ技能教育等、様々な知識・技能の研修を徹底して行います。入社時に薬に関する専門知識がなくても、研修期間中に十分教育を受けますから問題ありません」(永井氏)
 配属までの研修だけが学習の場ではない。同社では配属後も5年間は「若手MR研修」期間としてプレゼンテーションやネゴシエーションの研修を実施。5年目以降は、一人前のMRとして、「循環器スペシャリストコース」「糖尿病スペシャリストコース」など同社が強みを持つ分野の専門知識を高めるためのコースが設けられている。自社製品や医学・薬学に関する幅広い知識に加え、特定分野の専門知識を持ったMRの育成に力を入れることで、他社との差別化を図るのがねらいだ。また、研究職については部署ごとのOJTが中心である。いずれも、現場に密着した最新の知識・技術を絶えず吸収し続けなければならない。このように絶えず学び、新しい知識を吸収するには、自分で目標を定めて取り組む姿勢が必要だ。そして、それこそが武田薬品工業の求める人材像なのだと、永井氏は指摘する。
 「対象は何であれ、自分で高い目標を定め、達成に向けて諦めず粘り強く取り組む経験を持った人を評価しています。そういう人であれば、その対象が『仕事』になったときにも、同様の取り組みが期待できます。例えば、研究職であれば、ターゲットとなる物質について、いろんな発想や工夫を加え、何としても創薬に結び付けていく。あるいはMRであれば、当社製品の納入が困難であった医療機関に対して様々な取り組みを重ね採用に結び付けていくといったように。研究職でもMRでも、高い目標を掲げて粘り強く取り組むことが成果につながるのだと思います」
 現在、新薬開発に10年以上はかかる医薬品産業において、リーディングカンパニーであり続ける同社のベースには、こうした社員一人ひとりの「チャレンジ精神と粘り強さ」という資産がある。地道な努力の中に、大輪の花を咲かせる種は宿っているのである。
 
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