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問い直される修学旅行の意義
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文理コースは多岐に渡る進路志望に対応する班別学習を実施
 これに刺激を受け、同様のアプローチで修学旅行を見直したのが文理コースである。ただし、同コースの場合は、インターナショナルコースに比べ、より多様な生徒層を抱えているという点に特徴がある。奥村英治先生は、そんな同コースならではの工夫を次のように語る。
 「生徒の学力・進路志望が多岐に渡るため、課題研究のテーマも非常に幅広いものになることが予想されました。そこで、旅行先には教材が豊富な沖縄を選ぶと共に、学年団が協力して、クラスを解体したテーマ別の学習班を中心に、事前・事後学習を進める体制をつくりました」
 具体的には、全6クラスが「自然」「食文化」「歴史」などテーマ別の9つの班に編成され、「総合学習」はこの班別活動を軸に進められた。針谷忠昌先生は、このような見直しに伴い、教師側の事前準備の在り方も大きく変わったと指摘する。
 「例えば、沖縄の農業について、パイナップル栽培を題材に研究しようとした生徒がいます。この生徒の研究を支援するためには、教師自身がまずある程度の知識を身に付けなければなりません。また、旅行先のプログラムについても、今までとは違った視点で選定することが求められます。実際、下見の時点では、ただパイナップル畑を見せてくれるだけでなく、栽培の歴史や、沖縄に根付いた背景、地理的な特性などをきちんと説明できるガイドがいるかどうかも事前に確認しました」
 現在、文理コースでは研究発表会に向けたまとめ作業が始まっている。
 「最終的にはプレゼンテーションソフト等を駆使したハイレベルな発表会にしていきたいですね」(針谷先生)


進路意識の啓発や「総合学習」に対する生徒の取り組みに成果
 一連の取り組みを通じて、同校の教師たちはどのような成果をつかんだのだろうか。魚山先生が挙げるのは、活動の成果が、生徒の進路実現の方向につながっていることだ。
 「進路意識の向上が図れたことはもちろんですが、生徒の中にはAO入試に向けた資料として、そのまま研究を継続する者も見られました。修学旅行にも何らかの学習成果が求められているわけですが、今回の取り組みはそうした期待に対する一つの回答になったと思います」
 一方、奥村先生が指摘するのは活動の軸が一本通ったことで、「総合学習」の各種活動の体系化が一気に進んだことだ。
 「実は、文理コースでは02年度から進路意識の啓発を狙った進路講演会やグループ学習を行っていたのですが、生徒の多くはその意義を十分につかみきれていないようでした。しかし、『修学旅行に向けた学習』という目的に向け、活動の体系性が高まり、生徒も積極的に調査・研究活動に取り組むようになりました」
 帝京高校では今後、コース間のノウハウ交換や、4つのコースが合同で修学旅行を実施することも含め、修学旅行の在り方をさらに突き詰めて考えていく予定だ。
 
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